
糀場富美子 [作曲家]
Tomiko Kohjiba [Composer]
プロフィール東京芸術大学作曲科卒業、同大学院修了。85年(故)バーンスタイン氏の推薦で、大植英次指揮により初演された「広島レクイエム」は、小澤征爾指揮、ボストン交響楽団の定期演奏会のプログラムにも取り上げられ、現在も世界各国で演奏されている。また、95年米国サンタフェ室内楽音楽祭にレジデンス・コンポーザーとして招待される等、国内外で活動の場を広げている。近作に、「ぽるとがるぶみ」(02年林望作詞)、「光る橋」(04年瀬戸フィルハーモニー委嘱)、「Song of Sedona」(05年サンタフェ現代音楽祭)、「未風化の7つの横顔」(06年度別宮賞、芥川作曲賞受賞)等がある。現在、東京音楽大学教授、東京芸術大学非常勤講師、現音理事、作曲家協議会会員。
「輪廻」
The Transmigration of the Soul
-そして、魂の新生の-この曲は、1995年サンタフェ室内楽音楽祭の委嘱で作曲したものです。この音楽祭にコンポーザー・イン・レジデンスとして招待され、委嘱曲である「The Transmigration of the Soul」の初演の他に「広島レクイエム」「回波・尺八とチェロのために」などを演奏して頂きました。素晴らしい演奏者が集まるこの異国の地での音楽祭で、自作を語り、また演奏してもらえるという初めての経験に、ただただ興奮し歓喜したことを懐かしく思い出します。
この幸運をもたらして下さったのが本日の指揮者である大山平一郎氏です。当時サンタフェ音楽祭の音楽監督であった大山氏は、「広島レクイエム」を聞いて、一面識もない私に声をかけて下さいました。委嘱曲「The Transmigration of the Soul」は、アメリカでの再演をはじめ、日本においても九州交響楽団で再演されています。
この曲は、臨終の枕元でラマ僧が読むとされているチベットの「死者の書」をもとに書いています。人は死んでから7日毎に成仏の機会を得ることができ、49日経つと光に導かれて成仏するか、または転生するとされています。題名の「The Transmigration of the Soul」は直訳すると「輪廻」となりますが、この曲では、死の瞬間から魂が生まれ変わる時までを7つの楽章で表現しました。曲は、死を理解出来ずに苦しむ朦朧とした叫びから始まります。3楽章では「ああ短いかな人の命よ〜」と、死を嘆き、4楽章では「妄執にとらわれてはならない」と繰り返し自分に言い聞かせ、7楽章では「火の消えた者は、(中略)〜再生に至る」と、一筋の光に導かれて、静かに魂の新生の時を迎える姿を表しています。テクストは「SUTTA-NIPATA」「PRASHUNA-UPANISAD」の中から選び、それぞれパーリー、サンスクリットで歌われます。
今回演奏して下さる、ソプラノの半田美和子さん、大阪シンフォニカー交響楽団の皆様、そして、指揮の大山平一郎氏に心から感謝致します。