安田裕隆 さんの批評です。
誰かさんと誰かさん... 曲目に「と」で並べられた人名が並ぶ曲目で構成された演奏会。 指揮者のマッキーこと牧村邦彦さんが企画・構成におしゃべりまで行うプログラム。 牧 村さんのファンにとっては素敵な演奏会であったはずだが、雨が今にも降りそうな生憎の 天候のせいもあり、7割程度の入りだっただろうか。 ちょっと淋しい状態の客席だった。
さっそうと出てきた牧村さんが、勢いよくルスランとリュドミラの序曲を始める。 しっ かりと低音が響いてくる。 軽妙なタイトルだが、音楽は気合を入れていますよ、という ような意気込みが感じられる。 しかし、僕の座席が左隅ということもあるかもしれない が、オケ全体的に勢いや推しの強さはあるが、切れ味が感じられない。 花石さんのティ ムパニの響きにもどこか締まりがないように感じる。 ライナー/シカゴ響の演奏に馴染ん でいるせいでもあるので辛くなってしまうが、もどかしい、そんな感じ。
次のフォーレの組曲は、スピーチではフランス音楽らしく捕らえどころがない音楽で眠く なるかも... とのことだったが、句読点のはっきりした演奏だった。 ここでも低音がビ ンビンと聴こえてくる。 曲に対する気合は感じるのだが、いかんせん洒脱さが欠けてい てはフォーレらしくない。 そんな中で光っていたのがシシリエンヌでの末原さんのソロ。 どことなく懐かしくもあり、これは素晴らしかった。 そんな牧村さん、歌の伴奏になると何故か本領発揮... と感じてしまう。 最後のチャイ コフスキーのロメオとジュリエットも十分な力演であったことは否定しないし、オケのメ ンバーのソロも十分に美しくはあったのだが、オケ全体がうねるような感じ、音楽の奥行 きを感じさせるような深みにはちょっと乏しい。 音が十分に前には出ているのだが。 で、話はもどって、これが伴奏になるとのびやかだ。 またワーグナーでは第1ヴァイオ リンが10名の編成なのに音が十二分に粘ちっこくもなる。 単に的確な伴奏を付けてい る、そんなのではなく、ソリストものせてしまうような巧者ぶり。 音楽に底光りがする から不思議だ。 並河さんの歌はサン・サーンスの曲の後半から調子が出てきたかな。 そしてガーシュ ウィンのサマータイムが絶品。 オケのメンバーの共感あふれるサポートぶりが素晴らし かった。 ふっと
ダイアン・ウィットリーさんを指揮者に迎えた演奏会のことを思い出し た。 あの時、この若いオケのメンバー各自が持つスイング感のようなものが良く出てい てとても楽しかったし、またオケ全体の纏まりもよくて驚いたのだが、ここでの牧村さん もまた見事だった。 オケのメンバーの自発性を引き出していて楽しいし、そして要所を きちんと締めているのでけっして粗雑にならない。 そして何より並河さんの歌も堅苦し くなく見事だった。 僕の席から見た並河さんの横顔がどこかキャスリーン・バトルにも かぶって見えた。 巧かった。 この演奏を聴けたことが最大の収穫だったと思う。