1曲目はパッヘルベルのカノンであった。バックミュージックとしては、よく耳にするものの、演奏会で、このように集中して聴いたのは、私は初めてである。指揮者やチェリスト達のメトロノーム的感覚に対して、あっぱれと思う一方で、せっかく舞台と観客席という、緊張を伴う空間の中で演奏しているのだから、もう少し凛とした演奏を聴きたかったのが残念であった。特に、‘ここぞ’という部分で、メロディー部分のヴィヴラートをもっときかせて歌って欲しかったように思われる。フェスティバル名曲コンサートの趣旨から考えると、特に今日のプログラムは少し玄人好みだっただけに、このような身近な曲をプログラムの中に入れたことに対して、評価したい。
2曲目はモーツァルトの27番のピアノコンツェルトであった。この曲になった途端、うって変わって、曲が立体的になった感じをうけた。ピアノの細かい音符が続く箇所でのオーケストラとの不一致、出だしのピアノの左右の音量のバランスが気になったが、曲が進むにつれてそれらの問題は解決し、ピアニストの佐々さんの丁寧に解釈された、一つ一つのフレーズの終結の違いを、興味深く聴けた。また、第2楽章の、ピアノに続くオーケストラの出だしでは、ソリストとは一味違った繊細なフレーズを楽しませてもらった。佐々さんの演奏としては、個人的には、去年秋に同じフェステバル名曲コンサートで聴いたモーツァルトのコンツェルトの23番の方が、曲に対する愛情が1音1音に込められていて、好きであったが、これだけ繊細に弾ける彼女のコンツェルトを、モーツァルト以外でも聴いてみたいと思う。
3曲目はベートーヴェンの7番の交響曲であった。全体的には、弦楽器の安定した深みのある音を中心に、好演であったと思う。特に、第2楽章では「批評を書かなければ」という、私の頭にのっかかった漬物石の存在を、忘れさせてくれるほど、魅了される部分があった。木管やティンパニも、熱演だったと思うのだが、ただ残念なのが、この曲は金管が難しいのであろうか。せっかくの見せ場で、金管のアンバランスな響きで、全体のまとまりを崩し、どこかユーモラスな感じさえうけたのは、私だけであろうか。
いずれにしても、私が初めて大阪シンフォニカーの演奏を聴いた13年前と今の大阪シンフォニカー交響楽団の演奏は全然違うということを付け加えておきたい。久しく大阪シンフォニカーの演奏を聴いていないという方は、是非一度その違いを、聴き比べて頂けたらと思う。
森野熊太郎