座頭市太郎さん
「クリアなベートーヴェン」
指揮者とオーケストラの実力、その相性を占うのに、昔も今も最も大事な要素の一つは、ベートヴェン演奏だろう。第6回淡路島定期(九月三十日、しづかホール)の曲目は、バルトークのビオラ協奏曲をはさみ、「エグモント序曲」と「エロイカ」。曽我大介指揮、シンフォニカーは、軽快な動きとクリアな響きにこだわり、興味深い演奏を聴かせた。
「エグモント」も良かったが、関心の的はやはり「エロイカ」。速めのテンポ、力みのない節回しで、流れがいい。低弦のえぐり、ティンパニなど、旋律以外の要素に脚光を当て、音量的には抑えが利いているのだが、音楽は立体的だ。
第2楽章も「葬送」のムードを強調することない。メリハリが利き、十分劇的なのだが、どちらかというとイタリア・オペラに近い、カラリとした盛り上がり。木管のソロは好演で、残響豊かなホールの中で柔らかく溶け、心地よかった。
こうした狙いは3,4楽章とも一貫し、主張が明快なのだが、欲を言えば、やはりどこかで、ドシンと来る重い感動がほしい。年末の「第9」を楽しみにしたい。
バルトークは昨年、しづかホールビデオコンクール優勝の須田祥子が独奏。須田は作品の隅々までしっかりと練り上げ、低音の迫力、動きの良さとも絶妙。テンポ変化も確信に満ち、揺るぎのない表現だった。
淡路島定期を聴くのは今回初めてだったが、しづかホールのように音響がいい中規模ホールでオーケストラを聴くのは実にぜいたくだ。音楽の細部はもちろん、奏者の息遣いまで伝わる。音楽ファンなら、シンフォニーやいずみホールとは違う楽しみを一度は経験してほしい。