重盛 牧夫さん
やはり、ザンデルリンクのマーラーは素晴らしい。
ザンデルリンクの指揮は、私にとって今シーズン初めてである。しかも最も楽しみにしていたマーラーは、期待以上の出来栄えだった。冒頭のホルンが決まった瞬間に感じた名演の予感は、最後まで緊張感の持続した演奏によって、見事に的中したのである。
シンフォニカーとの共演の多いお二人のソロだが、今日の名演はお二人に負うところ大であろう。竹田さんは出だしにやや固さを感じたものの、すぐに本来の力強いテナーに戻り、マーラーの作品に一貫して流れている青春のニヒリズム(これはあくまでも私見であるが)が、見事に表現されていたように思う。アルトの郡さん、今日の演奏には文句のつけようがない。大地の歌に込められたマーラーの厭世感・無常感・諦観が溢れていて、告別が終わった瞬間、胸に込み上げるものがあった。バタフライのスズキが素晴らしかったので、それ以来大変気になる存在だったが、大地の歌に相応しい衣装を選択されたセンスも含めて、見事にはまったと感じる。
さて、ソロにも増して健闘したのがオケだろう。さすがに大編成にならざるを得ないので、かなりのエキストラが参加されていたが、最近にない充実ぶりである。特に管楽器陣の透明感あふれた音は初体験といえるくらいだ。さらに驚いたのが弦の音、特にヴァイオリンはアンサンブルが緻密で、他のパートとぶつかり合うことが全くな
く、非常にスムーズに音楽が運ばれていく。客演コンマス森下氏の力なのかどうかよくわからないが、これくらいのレベルの演奏が続くのであれば、今後の演奏に期待が大きく膨らむ。
前半の、シューマンのP協も好演だったと思うが、私自身この作品はあまり好きではないので、細かいことは控えさせていただきます。
座頭市太郎さん
武骨ながら誠実な音楽を作るザンデルリンク。その良さを最も強く感じたのが、今回の定期だ。 メーン・プログラムはマーラーの交響曲「大地の歌」。90人近くまで膨れ上がった大編成、おまけに複雑な難曲をしっかりまとめ上げた手腕は見事。独唱陣も、テノールの竹田昌弘は躍動感豊か、アルトの郡愛子は余裕たっぷりに深みのある歌を聴かせた。
冒頭からオケの動きは歯切れ良く、きりっと引き締まったサウンドには、品の良さがある。特定のパートを目立たせたり、作品が持つドロドロした退廃ムード、東洋的な情緒を際立たせるわけでもない。遅くも速くもないテンポで淡々と進むのだが、クライマックスに向けてオケは一体感を強めていくのだ。 約30分と長大な最終楽章「告別」は特に感動的だった。重々しい曲ながら、しなやかでニュアンスが豊か。生き生きとした流れがあって、退屈するどころか、どんどん引き込まれる。アルト独唱の裏で繰り広げられる木管アンサンブルの緊密さなど、魅力的な場面が相次いだ。音楽の起伏はすべて自然で、「永遠に」の歌詞で締めくくられる結尾部は味わい深かった。
前半に取り上げたシューマンのピアノ協奏曲も、基本的には同じ持ち味。独奏の奈良田朋子は気品高いスタイルで曲を進めつつ、ここという聴かせどころは情感をこめてロマンチックに歌う。これを受け止めるオーケストラは、しっとりした音色、軽快な動き。数日前の淡路定期よりも、さらにレベルアップした印象だった。特に第二楽章のピアノがチロチロ鳴らしている裏で、弦がメロディーを弾く部分は透明感豊かだった。ただし第三楽章ばかりは、もう一歩の推進力や高揚感がほしかった