![]() 指揮:曽我大介 |
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主催:ブラショフ「ジョルジュ・ディマ」フィルハーモニー協会 |
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大阪シンフォニカー交響楽団ルーマニア演奏旅行随行記その3
神戸新聞記者 藤本賢市
ツアー最終日の会場はブカレスト郊外の都市、プロイエシュティの「フィルハーモニカ」。地元オーケストラの本拠というものの、かつて映画館だったホールは残響が乏しい上、舞台もきゅうくつ。楽器の到着遅れなどもあり、万全の演奏は難しいかと思われたが、各奏者の自発性が今まで以上に発揮され、シンフォニカーの新境地ちもいえる熱演だった。
プログラムの最後、ベートーヴェン「7番」は、ことに熱かった。冒頭のオーボエ・ソロが会場の空気を貫くような鮮烈さを持ち、弦の掛け合いは、摩擦熱が伝わってきそうな緊張感。表現は引き締まり、誇張は一切ないものの、室内楽並みの豊かな自 発性が音楽を雄弁にしていた。熱さだけではなく、さらに一段高い世界に響きが昇華しているような感じさえした。 第2楽章は深い哀愁を漂わせながらも流れによどみがなく、安定感も高い。3、4楽章は、ともすれば楽天的な音楽になりがちだが、辛口に引き締まった好表現だった。隠し味的な役割のファゴット、トランペットなどもデリカシー豊かで有効に機能し、第3楽章トリオでの輝かしい響きは感動的だった。 前半では、間宮「地球の友達」での充実が目立った。大編成の割には音符が比較的少なく、いわば「わび・さび」を効かさねばならない作品なのだが、演奏を重ねるうちに、指揮者や各奏者の手の中に入ってきたようだ。特に4曲目では、低音の充実がベースとなり、壮大な表現となっていた。 尾高のフルート協奏曲は、会場でのリハーサル不足がたたったのかオケの音量が大き過ぎ、バランスを失っていたのが残念だったが、末原のソロは一段と主観的表現が強調され、訴える力が上がっていた。 3公演を振り返ると、初回はルーマニア国立放送響の「のり」と名人芸に、やや押されていた印象。技術面で見劣りしないものの、技術が技術にとどまって表現のために機能せず、音楽の色、味が乏しかった。いいパス回しをしながらフィニッシュできなかった、フランス大会時の日本代表とよく似たイメージなのだ。それが2、3回目の公演では、どしんと胸に響く演奏を繰り広げてくれた。特に環境が万全とはいえないプロイエシュティでの好演には、たくましさを感じた。 各公演で覇気に満ちた統率ぶりを発揮していたコンサートマスター森下は「有意義だった」と一言で振り返った。また、今回のツアー実現を敷島博子代表は「夢のゴールではなく、もっと大きな夢への大きな一歩」と言い、今回の成果を楽団の実力にしていくことの大切さを強調していた。こうした前向きな姿勢が、一層の飛躍を期待させる。 ツアー期間中の移動時や空き時間には、いくつかの文化、観光施設を見て回った。ブカレストのジョルジュ・エネスコ博物館では、エネスコの遺品などを通じ、その偉大さを実感。作曲だけでなく、バイオリンなどの奏者としても天才的だったといい、その音楽性はほとんど怪物的だったようだ。美しい容貌を明らかに意識していたような写真うつりからはナルシストの一面を感じさせるが、少なくとも「ルーマニア狂詩曲」をはじめとする代表作からは、人間性のゆがみは感じさせず、ふるさとへの賛歌が、謙虚な形で表現されている。 シナイアのペレシュ城は、19世紀終わりから20世紀のはじめにかけ、王室が約30年かけて建設したという。内部には、世界の美術史を凝縮したような、見事なアンティークの数々。単に豪奢なだけではなく、その収集・展示ぶりからは当時の王室の教養の高さ、洗練された趣味のよさなどが伝わった。 ルーマニアを代表する楽団、Tジョルジュ・エネスコUブカレスト・フィルハーモニーの本拠地である「アテネ音楽堂」は、ブカレスト中心部に位置。やはり19世紀末の名建築で、1989年の革命の戦乱の中でも、銃弾などを受けることがなかった。共産政権による破壊的な“都市整備”と革命のため、この都市は小パリと呼ばれた当時の美しさをほとんど失っているだけに、このホールが無傷だったのは奇跡に近い。 かつてブカレスト・フィルで約10年間活動し、現在はシンフォニカーのコントラバス奏者を務めるサンデール・スマランデスクが、内部を案内してくれた。大理石をふんだんに使った柱や階段は重厚さに満ちている。ホールは円形で、歴史を伝えるという壁画が、客席を取り囲むように描かれている。舞台では、ブカレスト・フィルがベートーヴェン「コリオラン序曲」を練習していた。サンデールが「世界で1番アコースティックな響きがします」と誇っていたのは大げさではなく、各楽器の音が見事に溶け合って生まれる柔らかい響きには、思わずぼう然となった。もう一度、ルーマニアを訪れるチャンスがあれば、このホールでのコンサートを聴いたみたい。(文中敬称略)
神戸新聞記者 藤本賢市
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