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1999年12月27日(月)ザ・シンフォニーホール
モーツァルト/ピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595
ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調作品125「合唱つき」ベーレンライター原典版

指揮/本名徹次 Pf/池田洋子
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コンサート批評
北夙川不可止(足立直哉さん)
1999年もあと五日となった12月27日の夜、ザ・シンフォニーホールでの「感動 の第九」を聴きに行った。いよいよ暮も押し迫り、ミレニアム気分が嫌が応でも 盛り上がる頃、運転手つきのリムジンで乗り付ける上品な老夫婦などもいて、大 変華やいだ雰囲気のコンサートであった。ザ・シンフォニーホールは表通りから 公園のプロムナードを通り抜ける間に“ケ”から“ハレ”へと気分が高揚し、白 亜の列柱のエントランスをくぐるころにはすっかり非日常の世界に没入すること ができる、日本では希有の立地に恵まれている。この日は特にこの素晴らしい立 地の有難さを痛感した。通を気取る人間からは「今更年末の第九なんて」等とい う声を聞くことも多いが、日本で“社交界”を感じさせてくれるイベントなどそ うはないので、暮の、それもクリスマスを過ぎてからの第九というものには他の コンサートでは得られない魅力がある。それを理解できない者はコンサートにも ダサダサの恰好で来る音楽オタクの朴念仁というべきであろう。 小生今回はまだ学生である友人三人との自腹での来場であったのでC席であっ たが、いきなり事務局長氏に批評を依頼されて面食らってしまった。前回「メサ イア」は当初から“批評モード”で聴くことができたが、今回は五月蝿いことを 言わずまず楽しもうというプライヴェートな耳で聴くつもりだっただけに、前回 以上に甘い評になってしまいそうである。 座席は三階席左側であったが、一段高くなったところの角というなかなかに良 い席であった。当日まで残っていたとは奇跡に近いといえるであろう。大変運が 良かった。
まず、モーツァルト最後のピアノ協奏曲である第二十七番変ロ長調ケッヒェル 595からコンサートは幕を開けた。ソリストは関西楽壇の重鎮、神戸女学院大学 音楽学部教授の池田洋子女史である。本名徹次氏はいつも通りタクトを持たず、 時折ピアノに片手をつく流麗な身のこなしでオーケストラを見事に操っていく。 ソロの池田女史は冒頭いきなりのミスタッチでドキッとさせられたが、さすがの 貫禄ですぐに調子を取り戻され、確かな技量と整った演奏で聴衆を引き付けてい く。感情に流され華美になりがちなモーツァルトだが、池田女史のピアノはモー ツァルトがロマン派ではなくあくまでも古典派の作曲家であることを思い出させ る、質実で豊かなものであった。オケとのコンビネーションも抜群で、「良いも のを聴かせて貰った」と皆して休憩時間に感想を述べ合ったぐらいである。
そして、メインの第九である。まずは冒頭のホルンが奇麗に出るかどうかが吹 奏楽部出身者として一番気になるところであるが、大阪シンフォニカーの皆さん は勿論完璧な演奏で小生の期待に応えてくれた。ティンパニーの花石氏の視覚的 にも見応えのあるパフォーマンスには、一緒に行ったパーカッショニストの女子 高校生も大変感激していたようだった。音楽もエンターテイメントなのであるか ら、あのような演奏姿勢は大いに評価されるべきであろう。 第二楽章のフーガも大変に美しかったが、何故だか木管にいささかの不満が残 ったことも確かである。本名氏が珍しくタクトを持っておられたのだが、時折そ れが譜面台に当って音を立てるのも耳障りであった。しかし迫力のある演奏で、 本日の第九の中でも最も上出来であったと思う。 三楽章、四楽章も、全体としてはなかなかであった。しかしコーラスについて は、人数的な制約のせいもあろうが、男声に迫力の不足を感じたことは言及せざ るを得ない。ソロ陣もなんだかまとまりがなく、冒頭のバリトンのみが評価でき るぐらいであった。初め良ければ全て良しで、「オー、フロイデ」が見事だった おかげで全体としての評価も低くないものとなっている。だが各人の技量からし て、この程度の演奏しかできないはずはなかろう。偏に合同練習の不足の故と思 われる。この時期様々なメンバーで繰り返し第九を唄うことから来る気の緩みも あったのだろうか? なお、当日はベーレンライダー原典版を用いての演奏であった。友人のプロビ オラ奏者からこの版は従来版と相当に違うと聞いていたが、実際今までの楽譜に 慣れ親しんだ耳には随所に違和感を憶える個所があった。しかし、これが原典版 に近いのであろうし、いずれ耳に馴染むようになるのであろう。本名氏の指揮は とにかくあっさり軽めという感じで、殆どタメがなく、これまた些かの違和感を 感じるものであった。また、先日の「メサイア」に引き続きオーソドックスな演 奏と比べると相当に速いテンポで、挑発的とさえ感じこれには却って快感を覚え た。 なお、前回の批評を読んで下さったのか、本名氏はカマーバンドの色を黒から 白に替えて下さり、しかもイカ胸ウィングカラーという正統派ドレスシャツ姿で あった。燕尾服の場合本当はカマーバンドではなくカマーベストがオーソドック スなのだが、やはり燕尾服には白が合い、大変に有難かった。他の楽団員の皆さ んも、カマーベスト派が増えたように思え、実に嬉しい。 これで、小生の今年のコンサート行脚の締めくくりとなった訳だが、高揚した 気分でホールを後にし、寒さも気にならないまま皆で梅田まで一気に歩いてしま った。何だかんだといっても必ずこの高揚感を味わえるところが、大阪シンフォ ニーの良いところであろう。2000年も、今まで以上の素晴らしい演奏の数々に出 会えるであろうとの期待を込め、ペンを擱くことにする。
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