第35回名曲コンサート2005年02月11日(金)
指揮:村上寿昭 
ピアノ:近藤嘉宏

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調op.23
ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調op.55「英雄」

◆ 曲目はチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番と、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」という、超有名曲2曲のいかにも名曲コンサートらしいプログラムである。指揮者の村上寿昭は、1974年生まれの31歳、小澤征爾門下で現在リンツ州立歌劇場の副指揮者として活躍中。
 村上のベートーヴェンは、一言で言えば竹を割ったようなストレートなスタイル。速めのテンポで遅滞なく、リズミカルに音楽が流れて行く。ホルンが1本とファゴット1本が追加されていたが、これは実践上必要と村上が考えたからだろう。第1楽章の提示部の繰り返しは省略、特別な思い入れは格別感じられず、古楽奏法をも意識することなく、真摯にスコアと向き合うところは、いかにも小澤門下らしいと感じられた。
 オーケストラを無理なく鳴らせ、押さえるべきところは押さえ、バランス感覚とコントロール能力はかなりの水準にあるとみた。いささか人畜無害の傾向はあるが、経験を積むことによって、自分の言うべき言葉に出会うのも間近になるだろう。大阪シンフォニカーは、この村上の要求に俊敏に応え、緻密でエネルギー感溢れるアンサンブルを聴かせていた。特に弦の合奏に音の芯のようなものがあり、一回り逞しさを身につけたようではある。
 チャイコフスキーは近藤嘉宏が、ソロイストとして招かれていたが、技術的には破綻のない仕上がりを聴かせたものの、スケール感という点では今一物足りなさを感じさせた。中でも和音が重なったときに、タッチが弱く楽器が十分鳴りきらない。特に長大な第1楽章で、そうした不満が散見された。反対に最も近藤の良さが出ていたのは終楽章で、これはひとえに彼のリズム感の良さに由来している。この曲での村上のつけは、律儀そのもので、無難の域を一歩も出るものではなく、音楽の流れにより柔軟性が求められよう。だがここでも大阪シンフォニカーは、オーケストラらしいまとまりのあるサウンドで応え、指揮者のぎこちなさをカヴァーする、流麗なアンサンブルを発揮したといえる。最近のこのオーケストラの演奏は、以前にも増して充実度を加えているが、つくづくオーケストラは生き物だと実感させられた。
(2月11日 [昼の部] ザ・シンフォニーホール)
(C)出谷 啓

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