第43回名曲コンサート2006年09月02日(土)
指揮:キンボー・イシイ=エトウ
ヴァイオリン:漆原啓子
スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲イ短調 Op.53
ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調 Op.95「新世界より」
※名曲コンサートによせて

◆曲目はスメタナの歌劇「売られた花嫁」序曲に始まり、ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲、それに同じく交響曲第9番「新世界より」という、オール・チェコ音楽によるプログラムで、いかにも「名曲コンサート」にふさわしい選曲といえる。指揮者は日系のアメリカ人指揮者で、ニューヨークのカユーガ室内管弦楽団の音楽監督を務める、キンボー・イシイ=エトウが客演した。なおヴァイオリン独奏は、漆原啓子であった。
 イシイ=エトウの指揮は、極めてバランス感覚に優れたもので、最初のスメタナから快調そのものだった。大阪シンフォニカーも緻密な弦のアンサンブルで応え、細かなパッセージも一音一音明確に聴かせ、対応する木管、さらに色彩を加える金管も、必要以上に煽り立てることなく、程好く推進力を保たせながら、スマートに曲をまとめ上げたといえる。そうした彼の特色は、「新世界より」でより明らかになったように思う。大阪シンフォニカーの弦の編成の少なさもあろうが、木管とかホルンといった内声部の動きが、実に雄弁に耳に届き、今まで聴きなれたこの曲の演奏とは、かなり異なったユニークな持ち味を感じさせた。たとえ全合奏(トゥッティ)になっても、内声部がサウンドの中に埋没せず、それぞれのパートを主張するのは、指揮者のバランス感覚と、コントロール能力の高さの表明にほかならない。いわゆるボヘミア的な、ローカルカラーを打ち出したスタイルではなく、近代的で洗練された都会指向の演奏だが、音楽的には決して間違った方向には走っていない。大阪シンフォニカーの力量の充実も、イシイ=エトウの表現力を倍化させたともいえよう。
 ただヴァイオリン協奏曲では、漆原のソロが技巧的には無難にこなしていのだが、ソロイストとしての華というものに乏しく、音色にもふくらみがなく、妙にぎすぎすしていたのが残念だった。ここでもイシイ=エトウの指揮は、音楽的なセンスに溢れたもので、ソロを引き立てるべく音量を適当に抑え、テンポが遅くなって来ると、トゥッティの箇所になると元に戻したりと、細かな配慮をみせていた。指揮者の心配りと、オーケストラの下支えに助けられ、みっともない演奏にならなかったのは幸いというべきである。
(9月2日 [昼の部] ザ・シンフォニーホール)
(C)出谷 啓

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