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指揮:現田茂夫 |
◆指揮は神奈川フィルの常任指揮者の現田茂夫で、久しぶりに名曲コンサートらしい、華やいだ楽しめるプログラムが組まれていた。前半はいわゆるオペラ・コンサートのスタイルで、モーツァルトの「魔笛」序曲から、第2幕夜の女王のアリア、続いてドリーブの「コッペリア」のワルツと、歌劇「ラクメ」の「鐘の歌」、最後はヴェルディの「運命の力」序曲と、「椿姫」のアリアとカヴァレッタ「花から花へ」という内容で、ソプラノ独唱には、中国は大連出身のサイ・イエングアンが招かれていた。そして後半はR=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」が演奏された。
現田はオペラの指揮経験が豊富なだけ、その手堅い職人芸には定評があり、序曲やワルツといったナンバーは、そつのない安定した表現を聴かせたといえる。大阪シンフォニカーの合奏も好調で、引き締まったアンサンブルで、好印象を残していた。サイ・イエングアンの歌唱は、コロラトゥーラのテクニックを備えた本格派で、いずれのアリアも的確にうたいこなしていたが、夜の女王などもう少し、表現にゆとりのようなものがあれば、申し分なかったといえよう。概して中国のうたい手は、技の完璧性に走る傾向があり、役柄の把握とか感情移入の面では、ややおろそかになりがちだが、彼女にも幾分その傾向が残っていて、特に夜の女王は高音を正確にうたうのが精一杯で、心の翳を表現する余裕が欲しかった。その意味で最もバランスがとれていたのは、「椿姫」のアリアとカヴァレッタだっただろう。彼女は典型的なリリコ・スピントで、本格的なコロラトゥーラをこなせる、貴重な存在と感じられた。これからの更なる活躍を期待したいところ。
「シェエラザード」は、大阪シンフォニカーの編成に合わせたような、どこか小ぶりというか、室内楽的と形容したいほどの、まとまりの良さが印象に残った好演だった。いわゆるストーリーテラー的な、描写性を前面に押し出した表現ではなく、あくまでも交響組曲としてのプロポーションを重視したスタイルである。この作品からゴージャスなサウンドとか、きらびやかな色彩感を期待する向きには、物足りなく思われたかも知れないが、オーケストラに決して無理をさせない、現田の危なげのない職人芸の確かさをここでは評価して置きたいと思う。そしてこの曲には、ヴァイオリン、チェロ、ハープ、それに木管金管など、ソロを吹く部分が多いが、大阪シンフォニカーのメンバーのグレードが、今回良く発揮されていたといえる。この安定ぶりが、現在のこのオーケストラの地力なのだろう。
(3月8日 [昼の部] ザ・シンフォニーホール)
(C)出谷 啓