第53回名曲コンサート2008年08月30日(土)
指揮:キンボー・イシイ=エトウ
ヴァイオリン:加藤知子
オッフェンバック  喜歌劇「パリの生活」序曲
シベリウス     ヴァイオリン協奏曲ニ短調Op.47
ブラームス     交響曲第1番ハ短調Op.68
※コンサートに寄せて

◆指揮者は日系アメリカ人の若手、キンボー・イシイ=エトウで、彼は現在テキサス州のアマリロ交響楽団の音楽監督を務め、ベルリン・コーミッシェ・オパーの楽長の地位にもある。最初のオッフェンバックの喜歌劇「パリの生活」序曲からして、快調にコンサートはスタートした。湧き立つようなリズムと、ご機嫌にうたわれる明るい旋律、ギャロップの軽快な足取りがこの上なく楽しい。イシイ=エトウの棒もさることながら、大阪シンフォニカーの気迫のこもった合奏力が、緊密なアンサンブルの底力になったようだ。
 続くシベリウスのヴァイオリン協奏曲には、久しぶりに加藤知子がソロイストに起用された。第7回チャイコフスキー国際コンクールに、第2位に入賞してから既に26年、昨今は演奏活動とともに、後進の指導にも力を入れていると聞くが、関西のステージに立つのは何年振りだろうか。ヴァイオリンのソロイストとしては、また一段とスケールの幅を広げた感じで、見事な演奏を展開していたといえる。特に低音域の音色が艶をおび、美しく響くさまはよほどの名器を使用しているためだろう。いわゆるクールなリリシズムで、割り切ってしまうのではなく、より人間的な暖かみを感じさせる表現は、彼女の演奏家としての成熟と、気力の充実をダイレクトに伝えていた。ただここでのイシイ=エトウの指揮は、丁寧に加藤のソロにつけてはいたが、いわゆる伴奏指揮の域を出るものではなく、堂々たる加藤の表現力に対峙するには、いささかスリルが足りないというのが実感。大阪シンフォニカーは、それなりにそつなくこなしてはいたが、それ以上のものでも以下のものでもなかった。
 ブラームスの交響曲第1番は、第1楽章の冒頭でコントラバスが飛び出すという乱れがあったものの、表現そのものはオーソドックスで衒いがなく、イシイ=エトウのスコアそのものに音楽を語らせるという、基本的な彼のコンセプトが明快に感じ取れた。彼は決してオーケストラを煽ることなく、各パートのバランスを整え、本来あるべき姿に作品を再現するのを心がけていたようだった。全体のサウンドも重心が低く、渋みを湛えた落ち着いた趣きだったが、これはむしろ指揮者の個性というよりは、大阪シンフォニカーの持つ性格のように感じられた。大山平一郎や児玉宏が、営々と育て植えつけてきた、独自のカラーがようやく実り始めた成果なのだろう。このブラームスを聴いて、大阪シンフォニカーならではの、音と響きが今出始めたような気がした。(08月30日 [夜の部] ザ・シンフォニーホール)
(C)出谷 啓

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