◆ 正指揮者の寺岡清高の指揮で、ニコライの歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲、ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番、それにメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」が演奏された。なおヴァイオリン独奏には、大ヴェテランの前橋汀子が招かれていた。
最初のニコライから、快調そのものの演奏だったといえる。寺岡のアプローチは極めて端正で、その上古典的な格調のようなものが感じられ、清々しい印象を与えられた。彼はオーケストラの響きのバランスを重視し、各声部の線の絡みを明らかにして、実に透明で見通しの良いサウンドを紡ぎ出していた。10分に満たないこの小さな音楽から、典雅ともいえる品格の高い表現を聴かせた、寺岡の指揮には心からの称賛を贈りたいと思う。
メンデルスゾーンも同じ傾向のスタイルであったが、ここでは大阪シンフォニカーのサウンドがより引き締まり、コアのしっかりとしたアンサンブルで、より充実した好演を展開していた。ここでも寺岡の表現は、古典的な構成力を意識したもので、余りストーリーテラー的なロマンを強調した行き方ではなかった。だがスコアの隅々まで丁寧に掘り起こすことによって、一つの大きなドラマ性というか、流れを感じさせる巧まざるロマンを描き出したのには、改めて感嘆させられた思いである。寺岡の表現が100%生かされることになったのは、このところ上り調子の大阪シンフォニカーの優れた演奏力に支えられていたのはいうまでもない。
そしてブルッフは前橋の貫禄で押し切ったような演奏で、そのユニークというか独特の節回しは、前橋流ともいうべきで、その一種のアクの強さが魅力であると同時に、好悪の分かれる分水嶺でもあるだろう。この場合も寺岡指揮の大阪シンフォニカーのサポートは強力で、ともすれば走りがちなソロを諌める役を果していたといえる。(10月13日・ザ・シンフォニーホール)
(C)出谷 啓