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◆ 2010年最初の名曲コンサートは、現在東京シティ・フィルの首席客演指揮者の地位にある、矢崎彦太郎の指揮で、オール・フレンチ・プログラムで開催された。前半は軽妙洒脱なビゼーの交響曲第1番と、イベールのフルート協奏曲、それに後半はラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」と、ドビュッシーの管弦楽のための映像第3集より、「イベリア」が演奏された。
矢崎は亡きピェール・デルヴォーの門下生で、今やフランス音楽の演奏にかけては、第1人者になった感がある。今回もビゼーの交響曲から、軽快なタッチの好演を聴かせたといえる。曲そのものがシューベルトの初期か、モーツァルトを思わせる持ち味だけに、矢崎のフランス仕込みの瀟洒さが、威力を発揮したようである。またイベールの協奏曲では、これまたフランス仕込みのヴェテラン、工藤重典がソロイストに招かれたが、曲を知り尽くした者のみが持つ、安定度の高い演奏ぶりで聴衆を魅了した。何よりも音色のヴァラエティが豊かで、技巧的にも破綻がなく、完全に演奏全体をリードしていた。都会的で洒落たフィーリングにも不足せず、久しぶりにこの曲の名演に接したというのが実感。矢崎指揮の大阪シンフォニカーは、工藤のリーダーシップに身を任せた感じだが、その割りにはよく追随していたといえる。
ラヴェルも淡彩でストレートな表現だったが、ホルンのハイノートに難のあったほかは、まずは好演の部類に属していただろう。木管にもう少しニュアンスがあったり、弦の響きに厚みが欲しかったりと、贅沢をいえばきりがないが、ここではむしろ矢崎のデリケートな音楽への気配りと、大阪シンフォニカーの精度の高いアンサンブル能力を、称賛して置くべきかも知れない。またドビュッシーの「イベリア」は、かつての矢崎にみられたように、楽天的ともいえる明るい表現だったが、大阪シンフォニカーも慣れぬレパートリーのせいか、戸惑いのようなものが感じられた。したがって「町々にて」とか、「祭りの日の朝」といった、輪郭のはっきりした曲はともかく、「夜の匂い」といった官能的な音楽では、いかにも雰囲気の乏しさが興を削いだ。
(1月24日・ザ・シンフォニーホール・夜の部)
(C)出谷 啓