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◆ 首席客演指揮者のキンボー・イシイ=エトウの指揮で、ラヴェルの「マ・メール・ロワ」組曲、ピアノ協奏曲、それにビゼーの「カルメン」第1、第2組曲が演奏された。大響の現在の指揮者陣は、音楽監督の児玉宏、正指揮者の寺岡清高ともに、ドイツ音楽を得意にしているので、イシイ=エトウがフランス音楽を受け持つという、一つの住み分けがなされたのだろうが、この方針はとりあえず成功したといえる。最初の「マ・メール・ロワから、軽いタッチの淡彩なサウンドが広がり、ラヴェルの描いたメルヘンの世界が、会場全体を満たす結果になった。木管のソロなど、もう少し表情が生き生きとしていたら、より理想に近付いたと思われるが、繊細な和声の変化は、指揮者のコントロールと、作品への理解と共感のほどが窺われる。大響の管楽器セクションも健闘して、技術的に難所をクリアーしていたばかりか、指揮者の要求に見事応えた充実のアンサンブルを展開していた。
ピアノ協奏曲では交野市出身の若手で、パリ音楽院に留学、ロン=ティボー国際コンクール、ショパン国際コンクールでも入賞経験のある、佐藤美香が独奏者に起用された。彼女は技巧的にこの曲を征服したのだけでなく、音色的にもまた感覚的にも、ラヴェルのマッチした独特のセンスを発揮した。グリッサンドやトリル、トレモロといった、細かい動きにも音色的な輝きが感じられ、この曲の持ち味にフィットした、文句のないアプローチだったといえる。またイシイ=エトウ指揮の大響も、単なる伴奏の域を越えて、極めて積極的でデリケートな反応を示していたのも、印象に鮮やかに残った。最近この曲のステージに接する機会が多いが、その中でも最も完成度が高く優れた演奏だった。これで第2楽章の表現に、一段と深みと清澄度が加われば、鬼に金棒になるだろう。それはアンコールに弾いた、「ボロディン風に」を聴いても分かる。彼女の音色には本能的に、ラヴェルにマッチする要素が内包されているのである。
ビゼーについては、何もいうところはない。「闘牛士の歌」や「セギディーリャ」で、コルネットのソロをフィーチュアするなど、普段聴きなれた組曲版とは、違った楽器法が耳新しかったが、イシイ=エトウのメリハリのきいた棒と、大響の優れたアンサンブル能力が相俟って、「名曲コンサート」らしい楽しい雰囲気を盛り上げていた。特にイシイ=エトウは、オペラ指揮者としても欧米での活躍も積極的なだけに、さすが手馴れたものと感心させられた。
(7月4日・ザ・シンフォニーホール)
(C)出谷 啓