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◆ 指揮は音楽監督の児玉宏で、ワーグナー楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」という選曲は、いかにも名曲コンサートにふさわしいが、真ん中のピルナイの「ドイツ流行歌の愉快なあそび」というのは、ちょっとやそっとでは聴くチャンスの少ない珍曲である。作曲者はオーストリア人だが、1920年代にヒットしたドイツのポピュラー・ソング、「膝で何する、親愛なハンス」を主題に、それぞれバッハ風、モーツァルト風、ロッシーニ風といった具合に、古今の大作曲家のスタイルで11の変奏曲を続けた、いわばパロディの遊びというわけ。かつてのピアニスト、ジョン・ベイレスとか、フランソワ・グロリューが、やっていたビートルズ・ナンバーの大作曲家風のパロディの逆を行くもの。まあいってみれば、音楽の着せ替え人形遊びだろう。
オケ・ピアノをまじえた、木管、ホルン、トランペット各1本に、弦楽合奏の小アンサンブルによる演奏だったが、これが実に楽しかった。11人の作曲家のスタイルの特徴が、実に分かり易く描き分けられている。次々に繰り出される変奏に、ニヤニヤしながら耳を傾けるのは、やはり最高の遊びの1つであろう。児玉もこれを一種のジョークとして、聴衆に突きつけては楽しんでいる趣も感じられた。
だがベートーヴェンは極めてまっとうなドイツ的な快演で、各声部の分離も良く、対位法的な動きが明瞭に聴き取れ、格調の高い古典的なプロポーションを明らかにしたものだった。全体的にテンポは快速で、音楽的な渋滞感がまったくなく、フットワークの軽快さは何とも快い。威圧感とか重苦しさとは無縁のベートーヴェンで、重心が妙に低くならず明朗闊達なのが、何にも増して魅力的だったといえる。第3楽章のトリオのホルンも、のびやかで実に柔らかくチャーミングだった。大阪響の管楽器も洗練された合奏に終始して、児玉のベートーヴェン解釈に俊敏な反応を示して立派であった。
ワーグナーも祝祭的な雰囲気を持った、なかなかの好演で、ここでもダイナミックではあるが、決して重苦しくならず、見通しの良い透明なサウンドが、耳を楽しませた。児玉の確かなコントロールと、自然な音楽の呼吸感が相俟って、3曲それぞれの持ち味を聴き手の心に届けられたのだった。今現在児玉と大阪響は、蜜月状態の頂点にあるといっていい。
(11月27日・ザ・シンフォニーホール)
(C)出谷 啓