第65回名曲コンサート2011年02月26日(日)

指 揮 : 寺岡 清高(正指揮者)
ピアノ : イリーナ・メジューエワ

シューマン   : 歌劇「ゲノヴェーヴァ」序曲 作品81
シューマン   : ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
ブラームス   : 交響曲 第3番 ヘ長調 作品90
☆曲目解説

◆ 正指揮者の寺岡清高の指揮で、シューマンの歌劇「ゲノヴェーヴァ」序曲、ピアノ協奏曲、それにブラームスの交響曲第3番という、ドイツ・ロマン派の王道を行く、堂々のプログラムであった。なおピアノ独奏者にはロシア出身で、現在日本に活動の本拠を置く、女流のイリーナ・メジューエワが招かれていた。
 メジューエワはいわゆる、テクニックに任せて弾きまくるタイプではなく、透明で磨き抜かれたタッチを駆使して、曲から豊かなニュアンスを引き出すのを得意とする。このシューマンでもスケールは決して大きくはないが、デリケートな表情の変化を紡ぎ出し、小ざっぱりと爽やかな抒情でまとめ上げていた。ただ全体に表現が淡白なためか、第2楽章などもう少し甘えるような、コケットリーが感じられてもともどかしいところもあった。だがここでは寺岡の指揮が、低音弦を濃厚にうたわせて、コクを与えるなどの工夫が功を奏して、演奏そのものはなかなかの高水準をキープしていたといえる。
 序曲とブラームスは、典型的なドイツ・ロマン派の重厚なサウンドで、実に雰囲気豊かな充実した演奏になっていた。寺岡の導き出す音楽は、今流行の小奇麗なまとまりを優先させた、都会風の洗練されたものではなく、むしろ手触りはゴツゴツとした、一見不器用な田夫野人風の演奏といえるが、構成的にはしっかりとまとめられ、しかも内容の充実した語り口が魅力的に響いた。大阪響もそうした寺岡の表現意図を的確に捉えて、俊敏この上ない反応を示して見事であった。またシューマンの序曲も、極めてオーソドックスな正統派の表現で、重心の低いどっしりとした響きに、寺岡と作品の相性の良さを感じさせる。現在活躍している日本人指揮者の中で、最もドイツ的な音楽をそれらしく奏でるのは、寺岡がその第一人者ではないかと思われる。彼の振るドイツ・ロマン派の音楽には、これからも注目して行きたいと思う。
(2月26日・ザ・シンフォニーホール)
(C)出谷 啓

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