
指揮:本名徹次 元大阪シンフォニカー交響楽団常任指揮者 ベトナム国立交響楽団 アップグレーディング・プロジェクトミュージックアドヴァイザー チェロ:ンゴ・ホァン・クァン ベトナム国立交響楽団 元首席チェロ奏者 チャイコフスキー:スラヴ行進曲op.31 チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲op.33 チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調op.64 |
◆第31回名曲コンサート
これまでフェスティバルホールで開催されてきた大阪シンフォニカー交響楽団の名曲コンサートは、今年度から会場をザ・シンフォニーホールに移して続けられることになったが、その第31回を聴いた。同一プログラムによる昼夜2回の公演だが、聴いたのは夜の部である。プログラムは、すべてチャイコフスキーの作品で、まず「スラヴ行進曲」、続いて「ロココ風の主題による変奏曲」、そして休憩後に交響曲第5番が、同交響楽団の元常任指揮者の本名徹次の指揮で演奏された。
冒頭の「スラヴ行進曲」は、確かにロシア的な力強さを感じさせる音響が聴かれたが、暴力的とか騒々しいといったものの少し手前で踏みとどまっているところに、オーケストラとしての力量が認められたように思う。いくら西欧派と呼ばれるチャイコフスキーと言えども、やはりロシアの作曲家だけに、ロシアのオーケストラなどは、圧倒的な大音量の迫力で演奏することもしばしばだが、そんな荒々しさは今回の演奏にはなかったことが喜ばしい。しかし表情自体は意外と律義なもので、もう少し柔軟さとか洗練味があっても、と思えたのも事実。
「ロココ風の主題による変奏曲」では、昨年春に同交響楽団が行ったベトナム公演での縁からだろう、ベトナム国立交響楽団の首席チェロ奏者のンゴ・ホァン・クァンが独奏者に迎えられていた。オーケストラは、弦楽器をかなり刈り込んだ編成で、きわめてソフトかつデリケートに演奏したが、それは独奏者に対応してのものなのだろう。クァンは実に真摯に、そして端正に演奏しているが、音量的にも音色的にも、いささかソリスティックな魅力に欠けるのである。良く言えば、きわめてナイーヴに音にしていると言えるだろうが、どうにもこぢんまりとまとまってしまう。もう少し見得を切るような表情とか輝かしさが加われば、もっと楽しめただろう。
最後の交響曲第5番は、なかなかの力演でありながら、決して力任せになってしまわないところを評価したい演奏だった。「スラヴ行進曲」と同様に、かなりパワフルな音響が聴かれたが、「スラヴ行進曲」より細部までコントロールが行き届いており、それに対する繊細な音響にも不足しなかったし、いずれにおいても気迫に富んだ音と表情が、その演奏を聴き応えのあるものにしていた。チャイコフスキーはメロディストと呼ばれるように、この交響曲にも美しい旋律が溢れているが、本名はその美しい主旋律のみを追うことなく、各声部のバランスに配慮を行き届かせて、精緻な表情を生み出していた点も見逃せない。もう少しテンポやリズムに柔軟な動きが加われば、さらに印象的な表情も生まれそうに思えたが、しかし安定度は高く、安心して聴いていられる内容であった。
(4月10日、ザ・シンフォニーホール)
(C)福本 健