
|
◆大阪シンフォニカー交響楽団第94回定期演奏会
第94回定期演奏会は、第91回に次いでドヴォルザーク没後100年を記念したプログラムの3回目で、第91回と同じチェコのウラディーミル・ヴァーレックが指揮台に上がり、ドヴォルザークの序曲「自然の王国で」と交響曲第9番「新世界より」、そしてその2曲の間にラフマニノフのピアノ協奏曲第1番を演奏した。
演奏会の前半に演奏された序曲とピアノ協奏曲は、いずれも滅多に実際のコンサートで聴く機会がないものだけに、期待半分、恐れ半分という気分だったが、少なくとも序曲は楽しめる演奏内容であった。自然あるいは森の目覚めを感じさせる冒頭部分に続いて、田園的な風景やその中での人々の営みが眼前に浮かぶような標題的な作品を、まさにそうした雰囲気も豊かに、美しく演奏された。オーケストラのアンサンブルも良くまとまっているし、音も豊かで暖かみがあり、作品の持ち味を十分に表出したと言える。
その序曲に比べると、同じように演奏される機会が少ない曲とは言え、ラフマニノフは少し魅力が少なかったと言うしかない。独奏者は清水和音で、強靱なタッチとそこから生まれる粒立ちの良い強い音で豪快に弾き進めていたところは、まさしくラフマニノフ向きと言えそうだし、技術的には確かに良く弾いていたと言える。しかし、そこまで強靱な音が本当に必要かどうかという疑問も湧く。第1楽章終わりのカデンツァなど、特にそう思えた。その強靱なタッチのせいか、あるいは調律における音の止めの甘さのせいか、第1楽章中程からすでに中音域以上でいくつかの音のユニゾンの狂いが目立ち始め、その結果として音色の不揃い、和音の濁りが生じて、それ以降の音楽が気持ちの悪いものになってしまったことも原因だろう。それでも達者なテクニックで弾き飛ばすことなく、しっかり音楽的な表現がなされていたなら、もう少しは楽しめただろう。ヴァーレックはこの独奏に、しっかりと合わせていただけに、残念な気がする。
前半の2曲から一転して、後半は超ポピュラーな名曲となっている「新世界より」だったが、ヴァーレックは全曲を速めのテンポで爽快に演奏した。特に初めの2つの楽章は、かなり速めであったが、決して弾き飛ばしているという感じはなくて、感傷性に溺れすぎない、とてもスマートな表現になっていた。魅力的な旋律に彩られた曲だけに、一般にその旋律にのみ焦点を当てることが少なくないが、ヴァーレックはすべてのパートに光を当て、普段あまり意識されない陰の旋律なども大切に表現して、とても魅力的な表情を生み出していた。ヴァーレックにとっての“お国もの”ではあるが、特に民族的な色合いを強調することなく、実にシャープでクリア、それでいて情感にも不足しない、なかなかの名演となっていた。
今回の定期演奏会で、このヴァーレックが今年の9月から同楽団の首席客演指揮者に就任することが発表されていたが、何とも喜ばしいことだと思う。
(6月16日、ザ・シンフォニーホール)
(C)福本 健