第97回定期演奏会2005年01月12日(水)
指揮:児玉宏
ヴァイオリン:木野雅之 日本フィルコンサートマスター

メンデルスゾーン :ヴァイオリン協奏曲ホ短調op.64
ブルックナー:交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」(ノーヴァク版第2稿)

◆楽曲解説

◆大阪シンフォニカー交響楽団第97回定期演奏会
 桐朋学園大学を卒業後、ドイツに渡って歌劇場やオーケストラの音楽監督を務めるなどの活躍を続けている児玉宏を迎えた今回の定期(おそらく、これが児玉の関西デビューとなるはずである)は、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とブルックナーの交響曲第3番「ワーグナー」というプログラムだが、冒頭に独奏者を伴わずにステージに現れた児玉は、このところの天変地異を憂うと同時に、2005年が阪神淡路大震災から10年、第2次世界大戦終結から60年という節目の年に当たることから、人それぞれに節目の感じ方は違うだろうけれど、私は音楽でそれを表現します(細かいことが良く聞き取れなかったので、おそらくこのようなことだろうと思うのだが)と言って、演奏を始めた。流れてきたのはバーバーの「弦楽のためのアダージョ」で、鎮魂の意味合いを込めた選曲なのだろうが、これがなかなか美しい演奏であった。各声部がしっかりと自己主張しながらたっぷりと旋律を歌い、しかも全体としてきわめて美しいバランスを保っている。力みのない音と緊張感のある音の運びから生まれる表情は、まさに祈りを感じさせるものであった。
 本来のプログラムに戻ってのメンデルスゾーンは、日本フィルのソロ・コンサートマスターを務めると同時にソロや室内楽などにも活躍している木野雅之を独奏者として演奏された。木野は、良く鳴る楽器を存分に鳴らして、豊かな音量で朗々と独奏した。勢いをもって達者に弾き上げる様は、メンデルスゾーンのこの曲には珍しいほどアッケラカンとしており、流麗さとか甘美さにはいささか距離があって、良く言えば開放的で男性的な表現であった。もう少しロマンティックな情感やきめ細やかなニュアンスが欲しいと感じられたが、おそらく辛口のメンデルスゾーンでも意図したのだろう。オーケストラはしかし、柔和でロマンティックな表情を聴かせており、児玉の協奏曲での付けの巧さを認めさせる内容であった。
 後半のブルックナーは、ノヴァーク校訂による1981年の新全集版による演奏で、ここでも児玉は指揮者としての力量をはっきりと示した。ブルックナーだからといって必要以上に重々しくならず、しかし十分に豊かな響きですっきりと音楽を運んだ。音楽の流れが途切れやすい第1楽章は、少し緊張感の持続に不足したように思えるところもあったが、楽章が進むほどに緊張感と緻密さを増してゆき、総体的にはなかなかに楽しめる演奏となった。特に声部間のバランス感覚が良いのだろうが、響きの色合いが豊かで、それぞれの場所にふさわしいカラーを出している点、そして旋律を優美に歌わせるところと武骨に処理するところの対比を明確にしている点、さらにきわめて力強い音を出している最強音においても決して騒々しい響きにならないコントロール力を持っている点など、好演に必要と思われる要素をしっかりと示した児玉に大いに好印象を抱いた。(1月12日・ザ・シンフォニーホール)
(C)福 本  健

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