◆大阪シンフォニカー交響楽団第102回定期演奏会
年中コンサートに通っていると、時々、面白い現象に出くわすもので、そのひとつが比較的短期間のうちに同じ曲を何度も聴くということがある。その曲が流行りというわけでもないだろうに、奏者を違えて同じ曲に出会うのである。今回の定期演奏会に取り上げられたスメタナの連作交響詩「わが祖国」も、この大阪シンフォニカー交響楽団を皮切りに、9月には大阪センチュリー交響楽団が、そして来年の3月には大阪フィルハーモニー交響楽団が演奏する予定になっている。同じ曲を同じ会場で、指揮者もオーケストラも違えて聴くことができるということは、当然聴き比べの楽しみもあるわけだが、そのトップを切った今回の定期は、続く2つのオーケストラにとってはプレッシャーとなるだろうと思われる内容であった。
指揮台に立ったのは、昨年秋に当オーケストラの首席客演指揮者となったウラディーミル・ヴァーレックで、今回がその就任記念の演奏会でもある。そのヴァーレックがいわばお国ものである「わが祖国」を、きわめて誠実かつ堅実に演奏した。第1曲の「ヴィシェフラド」は、やや慎重とも思える音の運びで、ゆったりとした気分を漂わせていたが、音量的にも表情的にも少しも強引さを感じさせない、無理のない演奏となっていた。最も有名な第2曲「モルダウ」も、冒頭のフルートの表情が硬かったものの、まずまずのまとまりを見せた。しかし、オーケストラが本当にひとつにまとまって、響きも充実してきたのは第3曲「シャールカ」からだった。この曲以降は、それこそ前の2曲以上にダイナミックな表現がとられることが多く、良く言えば情熱的、しかし実際は野放図に大音量を発するばかりのつまらない演奏を聴かされることも少なくないが、ヴァーレックは無理に大音量を求めることなく、決して美しい響きを損なわない音量にコントロールして、細やかな表情でそれぞれの曲を聴かせた。第5曲「ターボル」などは、様々な楽器がユニゾンで動くところが多いが、そこでもピッチが良く揃っているし、ブラス系の楽器も咆哮することがなかったため、強音でも少しも騒がしくならないのが良い。そもそもヴァーレックは、これまでに聴いた演奏でもそうだったが、あまり細工を施さず、特に変わった表現を目論むわけでもなく、素直に、ただし大変バランス感覚良く、作品の持ち味を伝える指揮者だと思うのだが、今回も同様に、少しもわざとらしさがないし、音量的にも煽り立てるわけでもなければ、抑えすぎることもない、まさに優れたバランス感覚に基づいた演奏となっていた。もちろん、表情の上では、もう少し味わい深さとか、鮮烈さを感じさせるものなどが欲しいと言えなくもないが、作品を十分に手中に収めたと思える安定感は、やはり得難いものだと言える。
(7月22日・ザ・シンフォニーホール)
(C)福 本 健