第109回定期演奏会2006年05月12日(金)
指揮:児玉宏
ピアノ:石井克典

モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番
ブルックナー:交響曲第7番
(アンコール)
グルック:歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」より 精霊の踊り

◆楽曲解説
◆シェフからのメッセージ

◆ 昨年1月の第97回定期に初登場した児玉宏が再び指揮台に立ち、モーツァルトのピアノ協奏曲第23番とブルックナーの交響曲第7番(ハース版)を演奏した。初めて大阪シンフォニカーを指揮した時も、児玉の力量に感心させられたものだが、今回もそれに劣らない充実した演奏を楽しむことができた。
 石井克典を独奏に迎えたモーツァルトで、すでに児玉はオーケストラから透明感のある音を引き出し、ふくよかに旋律をうたわせて、まことに美しいモーツァルトを奏でた。石井というピアニストは、今回初めて聴く人だが、これも期待を遙かに上回る好演。とても澄んだ美しい音を持っており、非常に安定したテクニックで軽やかに音楽を紡いでゆく。オーケストラと張り合うと言うより、デリケートに協調するといった感じで、少しも力まず、率直さと無理のなさが、かえって物足りなさを感じさせるほどだが、しかしその表情は充分にニュアンスに満ちており、なかなかに味わい深い。決して声高に主張することがないにもかかわらず、必要なことはしっかりと表現できているのである。オーケストラとのやりとりや音量的なバランスも見事なまでに整えられていた点は、石井と児玉のコンビならではのものだろう。これほど端正でいて音楽性に満ちたイ長調協奏曲は、滅多に聴けるものではないという気がする。
 児玉は、初登場の時にもブルックナーをプログラムに載せており、その時の第3番に対して書いたこと『特に声部間のバランス感覚が良いのだろうが、響きの色合いが豊かで、それぞれの場所にふさわしいカラーを出している点、そして旋律を優美に歌わせるところと武骨に処理するところの対比を明確にしている点、さらにきわめて力強い音を出している最強音においても決して騒々しい響きにならないコントロール力を持っている点』が、今回の第7番にもほとんどそのまま当てはまる。第1楽章冒頭の第1主題から、児玉の演奏を特徴づける歌心の豊かさが示され、それは全曲を通して失われることがない。極端に言えば、官能的とさえ言えそうなほどの音楽性の豊かさがそこには感じられる。そしてオーケストラの各パートがすべて見通せるような抜群のバランス感覚が、とかく重厚でダンゴ状態になりやすいブルックナーの音楽を、実にスッキリとしたものにしており、パワフルでありながら、少しも騒々しくならないのも良い。真のブルックナー・ファンからは、これはブルックナーではない、と言われるのかも知れないと思えるほど、その表情は優美で洗練されており、すべての音、フレーズにニュアンスの濃やかさが認められるのである。武骨で野暮ったいブルックナーが名演と誉め称えられている時、それならブルックナーなんか好きになれなくて結構と思っていたものだが、今回のような演奏で聴けるなら、ブルックナーも好きと言えそうである。
(5月12日、ザ・シンフォニーホール)
(C)福 本  健

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