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◆ 寺岡清高の指揮は、これまで何度か聴いて、とても素直な中に豊かな音楽性を感じさせることに好印象を持っているが、今回の定期でも、それを再確認させる内容であった。特に、冒頭のフォーレの組曲「ペレアスとメリザンド」で、その思いを強くした。柔らかい音とデリケートな表情が大変に美しい演奏で、まさしく秀逸と言って良い。特に意欲的とかユニークなことをしているわけではないのだが、旋律を優美にうたわせているところと、楽器間のバランスがとても良いところが、この美しい演奏の要因となったのだろう。とりわけ弱音における充実した響きは印象的であった。
ヴァイオリン独奏に二村英仁を迎えたラロの「スペイン交響曲」では、前曲と打って変わってオーケストラを開放的に鳴らし、南国風の明るい響きを作り出していた。ソロは、音程の取り方やテンポ感などに、いくらかのユニークさを感じさせたが、技術的には颯爽と言えるくらいに達者に弾き切った。ただ、彼とオーケストラとの向かっている音楽の方向が、必ずしも同一ではない感じで、それぞれが勝手に演奏していて、結果としては無難に収まったというところだろうか。急速なパッセージなどでは二村は、危うくはないが、少し急ぎ過ぎたり、かと思えば旋律的なところでは個性的な表情を見せたり、といった具合で、そのためかオーケストラもタイミングを合わせづらそうに思えたのだが。少しリズムやテンポが律義になってしまっていたのも、そうしたことが原因かも知れない。逆に二村にしてみれば、オーケストラにもう少し敏感に反応してもらいたいという思いが残ったかも。
最後に演奏されたサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」は、前の2曲とまた違って、デリケート過ぎず、また開放的にも過ぎず、なかなかに重厚な響きを生み出していた。第1楽章前半では少し強音で力が入りすぎという感もないではないが、第1楽章後半あたりからは余分な力が抜けて、ダイナミックながら入念な彫琢を感じさせるスケールの大きな表情を楽しむことができた。寺岡らしい柔軟な歌心は、当然ながら第1楽章後半に最も良く発揮されていたが、その他の部分もこれはこれで立派な演奏と言って良い。それでも欲を言うなら、全体的に若々しい力の漲った表現というだけでなく、より深々とした感銘を与える何かが欲しいということ。若く優秀な寺岡には、それくらいは期待して当然だろう。
(6月23日・ザ・シンフォニーホール)(C)福 本 健