第111回定期演奏会2006年07月13日(木)
指揮:ウラディーミル・ヴァーレック(当楽団首席客演指揮者)
チェロ:上村昇

リスト:交響詩「前奏曲」 
サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番 
チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」
◆楽曲解説
◆シェフからのメッセージ

◆ 今回の定期で指揮台に上がったのはウラディーミル・ヴァーレック。彼は2004年秋から大阪シンフォニカー交響楽団の首席客演指揮者を務めており、それ以前からも含めると何度も登場しているので、すでにお馴染みである。これまでの彼の指揮ぶりから、アッと驚くような異彩を放つようなことはない代わりに、常に堅実で安定した演奏を聴かせるという安心感を抱かせるという印象を持つが、今回もまさにそうした演奏であった。
 プログラムは、まずリストの交響詩「前奏曲」で始まったが、大変に誠実な演奏である。あまり細工を施さず、標題音楽である交響詩には少しは欲しいとも思える演出巧者らしいところもない。しかし素直に作品も持ち味を出していたのも確か。オーケストラのアンサンブルも良く整い、音も、もう少しふくらみが欲しいとは言え、無理のない美しい響きを出していた。
 それはメイン・プログラムとなったチャイコフスキーの交響曲第2番「小ロシア」においても変わることはない。例えばこの曲をロシアのオーケストラが演奏すると、金管を結構派手に鳴らして抑制に乏しくなることが多いが、ヴァーレックはオーケストラの鳴らし方も心得たもので、決して野放図に鳴らしまくって音を汚くすることがないし、楽器間の音量バランスにも適切な配慮を見せていた。その結果、あまり人気が高いとは言えないこの曲から、何か新しい魅力を引き出すといったところはないが、大変に手堅い演奏という印象である。ただ第3楽章は、リズム的にも音型的にもやや難しいためか、音にすることに追われていたように感じられた部分が少なくなかったのは残念。
 今回の定期で最も魅力的だったのは、上記の2曲の間に演奏されたサン=サーンスのチェロ協奏曲第1番だった。独奏したのは上村昇である。上村は室内楽などアンサンブルの一員としては、結構聴く機会が多いのだが、協奏曲の独奏者として聴くのは本当に久しぶりである。そして、一段と巧く、大きくなったという印象。曲が始まってすぐに弾き始めるソロから、まったく力みかえることなく、ごく自然に、しかしたっぷりとした美音と歌心で、美しく音楽を紡いでゆく。派手さを狙うとか見得を切るといったところなど少しもなくて、きわめて無理のない表現だが、どんなところでもオーケストラに埋没することなく、その音はオーケストラから一段浮き上がったような感じで届いてくる。そこには確かに、これ見よがしの華やかさはないが、しっかりと音楽を表現しているという充実感がある。若い人ががむしゃらに自己主張をしているような演奏とは対極の、まさに大家然とした演奏と言って良いだろう。ヴァーレックはここでも、オーケストラを整然としたアンサンブルでまとめ、軽やかな音と表情で好演していた。
(7月13日・ザ・シンフォニーホール)
(C)福 本  健

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