第114回定期演奏会2007年01月26日(金)
指揮:寺岡清高(正指揮者)
ソプラノ:半田美和子
シューベルト:交響曲 第4番 ハ短調 D.417悲劇的
マーラー:交響曲第4番
◆シェフからのメッセージ
◆楽曲解説
◆正指揮者である寺岡清高の指揮で演奏されたのは、ウィーンっ子であるシューベルトとウィーンに縁の深いマーラーの、どちらも第4番の交響曲である。
シューベルトのほうは「悲劇的」というサブ・タイトルが付けられたハ短調の作品で、必ずしも演奏される機会が多いとは言えないが、今回、寺岡はこの曲の魅力をまずは良く表現したと言えるだろう。第1楽章冒頭の序奏部分が、「悲劇的」という副題に結びついているのだろうが、そのダイナミックな部分から主部に入るまで、そして主部に入ってからも、ずっと力任せの荒々しい音はひとつもなく、まろやかで美しいところが印象的。弦楽器と管楽器の響きも美しくブレンドし、表情にも力みがなくてデリケートさと柔らかい歌心が感じられた。第2楽章でも柔和な美しさを出しており、表現に特に個性的なものを盛り込んでいるわけでないが、素直さの中に強い共感と優しい歌を感じさせた。ただ、第3楽章と第4楽章は、少しテンポの設定が速すぎたのではないだろうか。なぜなら音楽に少し勢いがありすぎて、表情に濃やかなニュアンスを付ける暇もなく先へ進んでしまっているという印象を与えたからである。それが、いささか残念であったと言っておこう。
そのシューベルトとは打って変わってと言っても良いだろう、マーラーは音と響きに生硬さを感じさせるところから始まった。第1楽章冒頭の鈴の音に導かれて現れる第1ヴァイオリンによる第1主題の入りからリズムが不揃いで、その後もアンサンブルの雑さと音の硬さが気になる。ただ、そうした点は曲が進むほどに落ち着きを見せ、アンサンブルに大きな不満を感じさせることは無くなっていったが、それよりもっと大きな問題は、良く言えばユニーク、しかし本音で言えば何とも奇妙な表現である。マーラーの音楽の多層的な書法に何だか振り回されているとでも言ったら良いだろうか。弦楽器と管楽器、あるいは様々な楽器の間の音量バランスが、とても整理されているとは言えないような凹凸具合なのである。特徴的な旋律を強調することが悪いわけではないが、それも程度もので、それに対する他の声部にも大切な旋律が流れていたりするから、そのバランスがうまく取れていてこそ、マーラーの魅力に繋がるのだと思う。いくらか官能的とさえ言えるテンポやリズムの揺れも、今回の演奏にはあまり認められず、マーラーならではの色と香りが、いささか少ない演奏だった。第4楽章で登場するソプラノは、最近目覚ましい活躍ぶりらしい半田美和子が東京から招かれていたが、確かに透明感のある美声と堅実な技巧は、なかなかに魅力的であり、表現もわずかに過剰気味と思えるところがあったものの、まずは的確。それに寄り添うようにオーケストラがデリケートでいて豊潤であったら、もっと良かっただろう。
(1月26日、ザ・シンフォニーホール)