
|
◆大阪シンフォニカー交響楽団の定期演奏会は、このところ充実していて聴きごたえのあるものがほとんど。たまには厳しいことも書きたいと思って臨むのだが、思いに反して魅せられてしまうこともしばしば。今回も、R・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」とかエルガーの「エニグマ変奏曲」と、オーケストラにとってはなかなか手強い作品がプログラムに載せられていたので、今宵こそは少々キツイことも言えるだろうと思っていた。ところが大山平一郎の指揮で演奏が始まると、最初の「ドン・ファン」からして、これがなかなかの充実ぶり。威勢が良すぎて騒々しくなることも多い作品だが、ピッチが良く揃っているしアンサンブルも良くまとまっていたので、かなり力強く鳴っているのだが、騒々しくならない。中程のオーボエのソロを初めとして表情も豊かだが、総体的に少し開放的にすぎる鳴らしっぷりの感があり、個人的には響きや音色にもう少し翳りとか甘さといったものが欲しいところもあった。しかしこれはこれで大変に立派な演奏であった。
そして後半に演奏された「エニグマ変奏曲」が、またなかなかの快演。冒頭で少し気弱さのような気分が感じられたものの、その冒頭主題には意味ありげでデリケートな表情が聴かれ、変奏が進むほどにオーケストラの表現力も調子を上げてゆく。色々と細工を施しすぎて訳が分からなくなることも多い曲だが、大山は意外と素直に、しかし十分にロマンティックな表情を付けながら、同時に楽器間のバランスや音楽の受け渡しに無理がないように配慮しながら、大袈裟にならない範囲で多彩な表情を聴かせた。実演では、ともかく楽しく聴けることが珍しい曲を、今回は魅力的とまでは言えないにしても、なかなか楽しむことができた。
これら2曲に挟まれる形で演奏されたのは、ベルリン在住の高橋礼恵(のりえ)を独奏に迎えたベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番で、これがまた素晴らしい名演だった。高橋は、名前を知るのも演奏を聴くのも初めての人で、まだベルリン芸術大学大学院に在学中ということだが、演奏が始まった途端、と言うか独奏ピアノが入った途端に、これは並のピアニストではないと思った。とにかく非常に音の美しいピアニストで、しかもテクニックの安定度は抜群、どんなところでもコントロールを失わないし、それでいてきわめて自然でいて豊かな音楽性が感じられる。推進力に富んだ音の運びで音楽を生き生きと歌わせており、深さを感じさせる第2楽章、軽快さの中に味わいのある第3楽章まで、実に感銘深く聴くことができた。オーケストラもピアノに負けず、ふくよかな音と響きでデリケートに対応していたため、この曲には珍しいほどに充実した演奏になっていた。
(4月13日、ザ・シンフォニーホール)(C)福 本 健