第119回定期演奏会
2007年07月20日(金)
「ヴァーレックのドヴォルザークIV」
指揮:ウラディーミル・ヴァーレック(首席客演指揮者)
ピアノ:清水和音
スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲
ドヴォルザーク:ピアノ協奏曲ト短調Op.33
ドヴォルザーク:交響曲第5番ヘ長調Op.76
◆シェフからのメッセージ
※楽曲解説

◆首席客演指揮者のウラディーミル・ヴァーレックが演奏したのは、スメタナの歌劇「売られた花嫁」序曲、ドヴォルザークのピアノ協奏曲と交響曲第5番という、何とも地味なプログラムである。ヴァーレック自身の国であるチェコを代表する作曲家の作品に対する熱い思い入れがあればこそのプログラムとも言えよう。例えば、日本人の指揮者だったら、間違ってもこのようなプログラムは組まないはずである。何故ならドヴォルザークの2曲は、どちらも滅多に実演で聴く機会がないからである。それはすなわち、演奏するには技術的に難し過ぎる、あるいは演奏するための経費が異常に高額になる、またあるいは一般の聴衆にごく普通には親しまれていないといった理由が考えられるのだが、今回の2曲は3番目の理由であまり演奏されないのだと思われる。スメタナにしても、これはポピュラーな作品で、オーケストラのコンサートのアンコールに演奏されたりもするほど親しまれているが、この1曲を目当てにコンサートに出掛ける人もあまりいないだろう。ということで、そうした地味なプログラムのせいだろうか、最近はかなり客席が埋まっていることが多いこのオーケストラの定期演奏会にしては、いつもほどの入りではなかったように見受けられた。
 しかし演奏は、これまでにこのオーケストラを指揮したヴァーレックの秀演に劣らない内容であったことは、実に喜ばしい。冒頭のスメタナからして、力みかえって速く細かい音の動きが揃わないまま勢いづいて騒々しく進められる演奏に接する機会が少なくない曲だが、今回は音の動きが軽快で、表情もあまり粘っこくなく、洗練さを感じさせるものだった。清水和音を独奏に迎えたピアノ協奏曲も、大変に手堅くまとめられた演奏となった。ピアノ・パートは難しい割りに華やかな効果もない曲だから、これをレパートリーにしているピアニストはそう多くないだろうが、清水は正確に音にするだけでなく、音そのものにソリスティックな輝きを持たせながら、コントロールの効いたダイナミックな表情で弾き上げた。それに対するオーケストラも、単なる伴奏に堕することなく、ピアノと呼応した豊かな表情で美しい音楽を奏でた。
 そのピアノ協奏曲と同様に、交響曲第5番も、いつもながらのヴァーレックらしく、特に民族色を強く打ち出すことなく、きわめてオーソドックスかつ手際よくまとめ上げていた。このような珍しい作品を暗譜で指揮するというのも、チェコの指揮者ならではのことだろう。そしてそれは細かい音の動きなど細部まで配慮を行き届かせながら、過度にならない中で豊かな表情を出すことにつながっていると感じられた。特に楽章が進むほどにアンサンブルのまとまりや気迫の度合いが増し、作品の持ち味を良く伝える演奏となった。(7月20日・ザ・シンフォニーホール)
(C)福本 健

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