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オルガン:鈴木隆太 ラインベルガー:オルガン協奏曲第1番ヘ長調Op.137 ブルックナー:交響曲第5番変ロ長調[ハース版] ◆シェフからのメッセージ ※楽曲解説 |
◆ 指揮者の児玉宏は、これまで当楽団の定期演奏会に2回登場し、いずれもブルックナーの交響曲をメインに据えて、きわめて充実した演奏を聴かせた。そうした経緯があってのことだろうが、来年4月から音楽監督・首席指揮者に就任することが決まったことは、実に喜ばしいことである。その児玉が、就任前の客演3回目として登場したのが今回の定期で、やはりメインにはブルックナーが据えられていた。
過去2回で第3番と第7番を指揮した児玉は、今回は第5番(ハース版)をとり上げた。ブルックナーの全9曲の交響曲の中で、第8番と並んで最も長大な作品だけに、構成力と緊張感の持続が問題になってくる曲と言えるだろうが、児玉はこれを全曲暗譜で指揮した。演奏は、これまでの児玉のブルックナー演奏と大きく違うところはなく、軽快なリズム感で方向性の定まった音楽の流れを生み出し、幅広いダイナミクスの中に豊かな表情を盛り込んでいた。全体にパワフルで、これまで以上にトランペットを初めとするブラス系を強調気味に使っており、若干だが響きが拡散する傾向があったものの、音楽的表情を失わない充実した最弱音の対照として、輝かしい力強さの象徴となっていた。こうした強弱の変化は、力強さと繊細さの絶妙なバランスによるものであり、ブルックナーらしい重厚さを感じさせる一方で、ブルックナー指揮者として名高い某巨匠の演奏のような鈍重さは微塵もなく、色彩感にも富んでいて、ニュアンスの豊かさも認められた。にもかかわらず時折、聴く側の集中力が途切れそうになるのは、作品そのものの冗長さのせいではなかろうかと思える。オーケストラも終始、児玉の指揮に緊張感をもって対応している様子が窺えたと同時に、その美しく充実した音を高く評価したい。
ブルックナーの前に演奏されたのは、わが国ではほとんど耳にする機会のないラインベルガーのオルガン協奏曲第1番で、独奏は鈴木隆太。ラインベルガーは19世紀後半に活躍したドイツの作曲家で、自身がオルガニストとして活躍したこともあって、オルガン曲が比較的よく知られるとは言え、実際に耳にする機会はあまりない。そして、今回演奏された協奏曲を聴いて、あまり演奏されないのも無理ないのでは、という印象。後期ロマン派の作品らしい抒情的で美しい旋律やオルガンらしい重厚な響きなどに魅力的なところも少なくないが、全3楽章を聴き進むほどに変化の乏しさが目立ってくるのである。起伏に乏しいと言うかインパクトが弱いと言うか、とにかく何となく時が過ぎて印象が薄いという感じ。それをカヴァーしようとしてか、鈴木は様々にストップを変えながら、音色や音量の変化を付けて演奏していたものの、表現そのものは堅実以上の感銘を与えるには至らなかった。そのオルガンに対するオーケストラ(と言っても弦合奏にホルン3本だけの編成だが)は、単なる伴奏に堕することなく、表情豊かに演奏されていた。
(9月12日・ザ・シンフォニーホール)(C)福本 健