
|
ピアノ:小川典子 バーンスタイン:「キャンディード」序曲 ガーシュウィン:ピアノ協奏曲ヘ調 バーバー:弦楽のためのアダージョ バーンスタイン:「ウェスト・サイド・ストーリー」より シンフォニック・ダンス ◆シェフからのメッセージ ◆曲目解説 |
◆ 《VIVA! アメリカ》と題された今回の定期は、そのタイトル通り、アメリカ音楽を集めたプログラムで、バーンスタインの「キャンディード」序曲、ガーシュウィンのヘ調のピアノ協奏曲(独奏は小川典子)、バーバーの「弦楽のためのアダージョ」、そして再びバーンスタインで「ウェスト・サイド・ストーリー」からの“シンフォニック・ダンス”が、大山平一郎の指揮で演奏された。大阪シンフォニカー交響楽団が、日頃どの程度にアメリカ音楽を演奏しているのか、詳細は知らないが、あまり聴いた記憶がないから、それほど頻繁に演奏しているわけではないと思われる。それもあってか、ガーシュウィンにおけるジャズとかブルーノート風のリズム感、バーンスタインにおけるラテンあるいはポップなダンス・ミュージックらしいリズム感といったところに、いくらかの不慣れさを感じたのも事実。しかし総体的には、なかなかに楽しめる内容の演奏であった。
大山は、冒頭の「キャンディード」序曲からして、アメリカ的な気分を出すために斜に構えるといったところがなく、正面から堂々とシンフォニックに処理しており、いささか生真面目過ぎてリズムの乗りが悪いという思いが残るものの、ダイナミックな表情はそれなりに楽しめるものだった。そのリズム感や音楽の乗りといった点は、ガーシュウィンの第1楽章冒頭のオーケストラだけによる提示部まで収まりの悪さのようなものを感じさせたのだが、小川のソロが入ってからは、俄然生彩を帯び、音楽が生き生きと弾んできた。小川の勢いのある音楽作りがオーケストラを牽引したとでも言えそうで、確かに小川のソロは素晴らしいものだった。作品にマッチしたパワフルな粒立ちの良い音で実に明快に演奏しており、オーケストラがピアノに少しも遠慮することなく豪快に演奏していても、その厚い響きの中をピアノの音が突き抜けて明瞭に聞こえてくる。そう言うと、力任せにピアノを鳴らしているように思われるかも知れないが、決してそうではなく、無理なくピアノを鳴らし切っているのである。表情ももちろん生き生きとして多彩であった。オーケストラもピアノに触発されて多彩かつ華やかに演奏しており、きわめて充実した内容となった。
バーバーは、一言で言えば、大変に美しい演奏であった。弦楽オーケストラの各パート、そして全体のピッチが良く揃い、アンサンブルも緻密で、音と響きに透明感があったことが要因だろう。表情も適度な情感を湛えて美しく、もう少しロマンティックで濃密な表現のほうがこの曲には合っているとも思えるが、こうしたスッキリと整った演奏もあっていいのではないかと思えた。最後の“シンフォニック・ダンス”は一転して、冒頭の「キャンディード」序曲より更にダイナミックな演奏となった。切れ目なく続く各曲に合わせた雰囲気の変化、開放感一杯の管楽器や打楽器の迫力などが、鳥肌が立つのを誘った。部分的にではあるが、曲と曲の移行部にスムースさを欠くと言うか少し音楽の流れがギクシャクした感じを抱かせたところがあった点は惜しいが、そんな細かいことはさておいて、全体としては熱気を放ったパワフルな演奏を十分に楽しむことができた。
(11月02日・ザ・シンフォニーホール)(C)福本 健