第123回定期演奏会2008年03月21日(金)
指揮:大山平一郎
(ミュージックアドバイザー・首席指揮者)
ヴァイオリン:竹澤恭子
エルガー:ヴァイオリン協奏曲ロ短調Op.61
ブラームス:交響曲第2番ニ長調Op.73
※シェフからのメッセージ
☆楽曲解説

◆ 平成19年度の文化庁芸術祭「芸術祭優秀賞」受賞記念と銘打たれた今回の定期は、受賞対象となった定期演奏会でも指揮をした大山平一郎が、指揮台に上がった。同楽団のミュージックアドバイザー・首席指揮者としては最後の公演でもある。
 まず、竹澤恭子を独奏に迎えてエルガーのヴァイオリン協奏曲が演奏された。この曲はエルガーの名曲のひとつに数えられるが、不思議なことに実演でも録音でも、これはという演奏に出会ったことがない。そもそもこの曲をレパートリーにしているヴァイオリニストが多くないようで、実演に接する機会も少ないし、録音されたものも決して多くない。ヴァイオリンの技巧が難しいことや、演奏時間が長大であるということなどが、その要因だろうと思うのだが、そうした中にあって竹澤は1993年にコリン・デイヴィス指揮バイエルン放送交響楽団とレコーディングを行っており、これをレパートリーとする決して多くないヴァイオリニストのひとりなのである。そして当夜の演奏も、まさに作品を自己のものにしていると言える安定度の高さを示していた。50分を優に越す曲の中で、ほとんど休みがないほど弾き続け、しかも難技巧が盛り込まれているのだから、正確に弾くだけでも大変な曲を、楽器をたっぷりと鳴らしながら朗々と演奏し、ソリスティックな輝きを放ちながら、いささか分厚い響きのオーケストラにも少しも負けることなく明快に音にした。これはもう文句なく立派な演奏であるが、やはり今回も感動には結びつかなかった。おそらく曲の持ち味が原因だとしか思えない。その立派なソロに対してオーケストラも、ほとんど初めて演奏する曲だろうと思うのだが、強音でもう少し丸みのある音が欲しいとか、音量的にやや抑制し過ぎかと思える部分があったことなどに若干の不満を残したものの、堅実さでサポートの役割を立派に果たしていた。
 後半はブラームスの交響曲第2番だったが、これがまた大山らしいロマンティックな名演となった。エルガーから一転して、いかにもブラームスらしい音と響きが導き出され、特に弦楽器の響きの充実が目立った。それに対する管楽器のバランスも程良く、曲の前半くらいで、いつもより数ランク上がったオーケストラといった印象を持った。演奏そのものも全楽章に亘って、粘度のある音の動きに込められたふくよかな表情と、少しの無理も感じさせない流麗そのものといった音楽の流れが心地よい。その流麗さに水を差すようなピッチの不揃いやアンサンブルの乱れもなく、オーケストラの一体感はエルガーより数段上と言える。しかもどのパートも力みのない美しい歌心に支えられていて、表情が生き生きとしていた。全曲を聴き終える頃には、どこかドイツの優れたオーケストラを聴いているような気にすらさせられた。大山最後の、まさに入魂の演奏であった。
(03月21日・ザ・シンフォニーホール)
(C)福本 健

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