第129回定期演奏会2008年11月07日(金)
指揮:広上淳一 
ヴァイオリン:米元響子
ピアノ:河村尚子
メンデルスゾーン  序曲「静かな海と楽しい航海」Op.27
メンデルスゾーン  ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲ニ短調
メンデルスゾーン  交響曲第1番ハ短調 Op.11

※シェフからのメッセージ
▽曲目解説

 このところの定期演奏会は好調続きで、十分あるいはそれなりにかはともかくとして、楽しめる内容だったのだが、今回は残念ながら好調ぶりが一旦打ち切られる形となった。
 演奏されたのはメンデルスゾーンが10代で作曲した3曲で、序曲「静かな海と楽しい航海」「ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲」「交響曲第1番」という、いささか地味と言うか華のないプログラム。しかし逆に、それほど人々に親しまれていない曲ながら、聴くべき魅力を人々に指し示すという意味で、指揮者の実力を発揮させ得るプログラムでもある。その実力に疑問を抱かせたのは、現在、京都市交響楽団の常任指揮者を務めている広上淳一である。最近の広上の演奏を聴くと、元気一杯で威勢がよすぎる傾向が強く、それが曲にぴったりマッチすればすばらしい演奏になるのだろうが、あまりそういう時に出会ったこともない。今回も冒頭の序曲からして、きわめてダイナミックと言える演奏を聴かせた。描写性の強いこの曲の開始部分は、風の凪いだ静かな海のはずなのだが、最初から音量が大き過ぎるし、音楽の身振りも大きい。楽しい航海の部分でもせかせかと先を急ぐばかりで、落ち着きがない。もう少しメンデルスゾーンらしい優美な音楽の流れが欲しいところである。とにかく、ほとんど弱音が使えず、野放図に鳴らすばかり。それは最後の交響曲でも同じ。元気一杯ということは決して悪いわけではないが、その中にニュアンスの豊かさがなければ、音楽としては少しも魅力あるものにはならないだろう。ほとんどメゾ・フォルテ以上の音量(第3楽章のトリオと第4楽章の弦楽器のピッチカートの部分では弱音に近いものが聴かれたが)で、しかも響きに膨らみが乏しく、さらに杓子定規で伸縮性に欠けたリズムで演奏されるものだから、ただただ音にしているだけという印象。良く言えば、オーケストラを自由に伸び伸びと演奏させていると言えるかもしれないし、そうだとしたらオーケストラの楽員は神経を使ってデリケートに音を出す必要がないから、楽な演奏になっているだろうが、そこから緊張感のあるアンサンブルや表情は生まれてこない。
 協奏曲では、国際的なコンクールで優秀な成績を収め、ヨーロッパで勉強を続けながら演奏活動を続けているヴァイオリンの米元響子とピアノの河村尚子が独奏に迎えられていたが、確かに技術的には両者とも破綻がなく、堅実さを見せていたものの、音楽的な魅力という点ではどちらも明快に自己主張しているとは言えず、正確に音にした段階を大きく越えることがなかった。楽章が進むほどに河村は少しは音楽的な主張を見せたが、米元はほとんど一本調子に終わった。弦楽のみのオーケストラは、さほど活躍する場がないだけに、しっかりと伴奏に回っていて、他の2曲ほどの不満を抱かせることはなかった。
(11月7日・ザ・シンフォニーホール)
  
(C)福本 健

HOME | もどる