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◆今年4月に首席客演指揮者に就任したばかりのキンボー・イシイ=エトウが定期演奏会に早速登場した。首席客演指揮者就任記念と銘打ち、【春の息吹】と題されて演奏されたのは、まずブリテンの「シンプル・シンフォニー」で、弦楽器のみの編成による作品だが、編成を刈り込むことなく演奏されたためだろうか、この動きのある快活な曲の持ち味があまり生かされなかったのが残念。音楽の運びも少し慎重に過ぎる感じで、アンサンブルを整えることを最優先にしたような印象である。そのため表情もいささか平坦で、強弱を含めて、各パート間のバランスなど、もっと繊細にコントロールする必要があるだろう。全体としては確かに堅実ではあるが、音楽的な感興には乏しかった。もう少し小さい編成に刈り込んで演奏していたら、もしかするとより軽妙快活な演奏になっていたかも。
続いては、今度はコントラバス以外の弦楽器を省いて管楽器が主体となるストラヴィンスキーの「ピアノと管楽器のための協奏曲」が演奏されたが、これもブリテン以上に正確に音にしている以外のものが伝わってこない。ストラヴィンスキーの作品の中では、人気がない部類に入る作品で、滅多に実演に接することがないだけに、こうした機会はありがたいとは思うものの、せっかくなら、人気はないながらこれほど面白い曲なんだと思わせるような表現が欲しかった。ピアノ・ソロを受け持ったのはロンドンを本拠に活動を続けている岡田博美で、相変わらずの端正さを披露した。何より、こんな珍しい曲をレパートリーにしていることに驚かされた上に、技巧的な難曲を見事なまでに弾きこなしていたことにも驚かされた。ただしオーケストラと意思疎通させようという思いはほとんど感じられず、無機的と言えるほどに実直かつ鮮やかに弾き終えた。ピアノとオーケストラの音量バランスがふさわしいとは思えない部分が多かったことも、多少は関係しているかも知れない。
前半の2曲を聴いて、後半のシューマンの交響曲第1番「春」に一抹の不安を感じていたのだが、それはまさしく現実のものになった。この曲が最も良く弾き込んだ印象を与えるものの、音楽的には全く魅力を感じることができなかった。今回の3曲すべてに共通して言えることだが、表現が基本的に強弱のみによっており、テンポやリズムの伸縮性がないこと、そしてただ開放的にオーケストラを鳴らすばかりで、響きにふくらみがないこと、またパート間のバランスに対する配慮が認められないこと、語り口の微妙なニュアンスも感じられないことなど、あまりに味わいに乏しい演奏であった。
音量の微妙なコントロールや、音や響きの美しさ、ニュアンスの豊かさなどを、うるさく要求しない指揮者は、もしかすると楽員には受けがよいかも知れないが、最近のシンフォニカーはかなり厳しい要求にも対応できるようになっており、現にこのところはそのような演奏を聴かせてきただけに、今回はそうした要求をしていないのではないか、あるいはそもそもそういう要求すらないのではないか、という思いが残る。それとも今回は、たまたまこのような味気ない演奏になっただけなのかも知れない。本当に、たまたまであって欲しいものである。(4月14日・ザ・シンフォニーホール)(C)福本 健