第135回定期演奏会2009年05月29日(金)
【ベートーヴェンと世紀末ウィーンの知られざる交響曲 III 】
 《2008-2009年度全4回シリーズ》

指 揮 : 寺岡 清高(正指揮者)
ベートーヴェン    : 交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68「田園」
ツェムリンスキー   : 交響曲 第2番 変ロ長調
※シェフからのメッセージ
▽曲目解説

◆ 今回の定期は、正指揮者の寺岡清高が企画した《ベートーヴェンと世紀末ウィーンの知られざる交響曲》の第3回で、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」とツェムリンスキーの交響曲第2番が演奏された。
 寺岡の指揮は、これまでずっとそうだったように、奇をてらうこともなく、アイデアを凝らすということもなく、真っ直ぐ作品に向かって、その作品の持ち味を提示するという姿勢が特徴だと思うが、今回もまさにそのような演奏であった。
 最初のベートーヴェンは、最近流行のピリオド奏法を表面的にだけ取り込むということもなく、また特に個性的なところもなかったが、きわめて良く整っていると同時に、響きに透明感があり、しかも音楽の運びに柔軟性があって、とても心地よい音楽が息づいていた。第2楽章の後半は、少し集中力を欠いたような、少しざわついた印象があったものの、それも大きな問題というほどのものでなく、全体には伸びやかかつふくよかな表情が魅力で、主旋律の豊かな表情は当然ながら、その他の声部のデリケートなニュアンスが、何とも味わい深いものを生んでいた。第4楽章の「雷鳴と嵐」も、下手をすると騒々しいだけの音響になりがちだが、寺岡はオーケストラを良くコントロールし、少しも暴力的になることなく、音楽的表情を失わなかったところも良かった。こうしたことは、ごく当たり前のことのようだが、実は実現する指揮者は意外に少ない。その点で寺岡は、持ち前の誠実さと音楽性でそれを見事に成し遂げたと言ってよいだろう。
 後半のツェムリンスキーも基本的には同様の仕上がり。《知られざる交響曲》と言われるように、確かに実演に接する機会はきわめて稀な作品で、国内でもCDは発売されたことはあるが、かなりマニアックな人くらいしか聴いていないのではないかと思われる。しかし作品そのものは、決して奇抜なものではなく、むしろ後期ロマン派風の聴き易いものである。ベートーヴェンより少し編成が大きくなっていることもあって、響きも力強さと重厚さを増しているが、ここでも寺岡は正攻法の取り組みできっちりと音にしており、その中で十分に音楽的な表情を生み出して、作品の持ち味を示していた。作品そのものは、各楽章それぞれに旋律的な魅力を感じさせる部分も多いのだが、至るところでブルックナー風であったり、ドヴォルザーク風であったり、はたまたブラームス風であったりと、どこか一貫性に欠けるような印象も受ける。第4楽章を、師であるブラームスの交響曲第4番に倣ってパッサカリアとして書いているところも、十分に面白いとは思いながら、ブラームスには負けるという印象。それはともかく、この珍しい作品を高水準の演奏で聴かせてくれたことは、十分に価値あることだった。(5月29日・ザ・シンフォニーホール)
(C)福本 健

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