第136回定期演奏会2009年06月19日(金)
【ドイツ・ロマン派の秘密】 =ジークフリート・ワーグナー生誕140年=
指 揮 : 児玉 宏(音楽監督・首席指揮者)
ジークフリート・ワーグナー : 歌劇「異教徒の王」間奏曲 “信仰”
ジークフリート・ワーグナー : 交響詩 「幸福」
ブルッフ          : 交響曲 第3番 ホ長調 Op.51

※シェフからのメッセージ
▽曲目解説

◆ 3月の定期演奏会の批評でも書いたが、音楽監督で首席指揮者の児玉宏と正指揮者の寺岡清高が、それぞれに定期演奏会のプログラムに珍しい作品を組み入れることが続いている。児玉が登場した今回の定期では、それに輪をかけたように、すべてがほとんど実演では耳にする機会がなかった作品ばかりという徹底ぶり。一般の聴衆にもまったく馴染みがないような曲を並べ続けると、聴衆離れが懸念されたのだが、確かに今回はいつもより若干、空席が多いように見受けられたものの、極端に空席が多くて寒々しいというようなことにはなっていなかった。児玉の場合、これまでの実績から、知らない曲でも楽しく聞かせてくれるという確信のようなものが聴衆にあるのかも知れない。そして実際、今回もその期待を少しも裏切ることがなかった。
 【ドイツ・ロマン派の秘密】、そしてサブ・タイトルに《ジークフリート・ワーグナー生誕140年》と記されたプログラムの内容は、偉大なるリヒャルト・ワーグナーの長男で、父親の楽劇の演出家として有名なジークフリート・ワーグナーの歌劇「異教徒の王」から間奏曲“信仰”と交響詩「幸福」、そしてほとんどヴァイオリン協奏曲第1番のみで知られるマックス・ブルッフの交響曲第3番である。ジークフリート・ワーグナーの場合は父リヒャルトの作品がナチスによって政治的に利用されたことと関係して、そしてブルッフの場合はユダヤの家系と疑われたことからナチスによって上演禁止措置がとられたことと関係して、いずれも歴史の流れの中で忘れ去られてしまっていた作品である。しかし実際にその演奏を聴くと、どれも後期ロマン派風の作曲句碑風の中に個性的な表情をちりばめて、なかなかに魅力的な作品である。特にジークフリートの間奏曲“信仰”はデリケートかつニュアンス豊かな表情で楽しめる内容。タイトルを知らなくても、とりわけ開始部分や終結部分には宗教的な雰囲気が感じられるもの。もっと頻繁に演奏されても良さそうな曲である。交響詩は、様々な幸福のあり方を音で描いたものだけに、前曲よりダイナミックで変化に富んでいるが、基本的にはロマンティックな旋律と響きが主体となっている。
 ブルッフの交響曲は、ほぼ同じ時代に活躍したブラームスに似た響きが聴かれるところもあるが、第1楽章序奏部からしてオペラの序曲のような雰囲気を持っており、旋律の扱い方は独自のものを感じさせる。楽章が進んで全曲を聴き終えると、特に独創的なところはないが、実に手堅くまとめられ、そして随所にブルッフらしい旋律美を盛り込んで、聴く者を飽きさせない。これを聴いていると、ブルッフの未知の他の作品も聴いてみたくなるほど。
 これらすべてが、実演で接するのが初めてであるにもかかわらず、それだけ楽しめたのは、もちろん児玉の力によるところが大きい。珍しい作品を紹介することが大きな目的のひとつであるのだろうが、それが少しも義務的でなく、本当にそれぞれの曲を魅力あるものと思っている、と言うか惚れ込んでいる気持ちが伝わってくるような演奏なのである。当然、曲を完全に掌握してタクトを執っているから、オーケストラ側にも少しの不安な様子もなく、すべてのパートが伸びやかに音にしているから表情が生き生きとしており、その結果がすべての曲で魅力的な演奏となったに違いない。 (6月19日・ザ・シンフォニーホール)
(C)福本 健

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