第138回定期演奏会2009年09月16日(水)
【大英帝国の香り】
指 揮 : 大友 直人
フルート: 新村 理々愛
ヴォーン=ウィリアムズ : タリスの主題による幻想曲
モーツァルト      : フルート協奏曲 第2番 ニ長調 K.314(285d)
エルガー        : 交響曲 第2番 変ホ長調 Op.63

※シェフからのメッセージ
▽曲目解説

◆ 指揮に大友直人を迎えて演奏されたのは、ヴォーン=ウィリアムズの「タリスの主題による幻想曲」、モーツァルトのフルート協奏曲第2番、エルガーの交響曲第2番という、何とも地味なプログラムだった。このところ毎回のように、定期演奏会で珍しい作品が取り上げられていると書いてきたが、今回のヴォーン=ウィリアムズもエルガーも滅多に実演に接することがない曲と言える。それもあってか、いつもほど客席が埋まっていなかった。これまでは珍曲があるにもかかわらず多くの聴衆が集まっていただけに、不思議な現象である。
 それはともかくとして、最初のヴォーン=ウィリアムズは弦楽器のみによる作品だが、なかなかの充実ぶりを示した。曲そのものがヴォーン=ウィリアムズらしいと言うか、イギリスの作品らしいと言うか、中庸の精神でまとめられたような曲なので、いささか冗長感を否めないと思うのだが、にもかかわらず充実した響きと適度に起伏に富んだ表情で楽しめる仕上がり。アンサンブルも良く整っており、ヴァイオリンとヴィオラの独奏も過不足なかった。
 モーツァルトでの独奏者は、まだ15歳という超若手の新村理々愛(りりあ)だが、いくつものコンクール歴が示すように、たっぷりと楽器を鳴らした豊かでムラのない美音と高度に安定した技巧が印象的。15歳とは思えない落ち着きもあって、苦もなく伸びやかに演奏した。近年の若手に多い、技巧は文句なく達者だが音楽的感興に乏しい演奏とはちがって、新村にはいささかストレートではあるが十分に音楽的な表情がある点も良い。ただしカデンツァは技巧を凝らし過ぎて、まるで19世紀後半のヴィルトゥオーゾ・タイプ。音楽的にはモーツァルトからどんどん離れてしまって、後奏に入るところに無理と言うか違和感を覚えてしまう。そこは技巧を見せびらかすところだからと言ってしまえばそれまでなのだが、もう少し古典派の枠を出ないようなカデンツァだったら、もっと素敵だったのにと思ってしまった。ここでのオーケストラは、フルートを立て過ぎて、まったく消極的な表現に終始したし、アンサンブルもやや雑だったのが残念。
 エルガーは、曲自体がうまく聴かせることが難しいものと言えると思うのだが、その割りには良く健闘していた演奏である。とにかく音を詰め込み過ぎて、ほとんど休符がないほどにダラダラと音が流れてゆくように書かれているので、第1楽章では細切れの楽句がつながりきらないという印象。大きな音楽の流れが出てこないのである。しかし第2楽章以降は、一本筋が通ったと言える大らかな流れが出て、音楽の方向感が分かる表現になってきた。この曲は、ただかっちりと音にしてゆくだけでは、そうでなくても長い曲だけに、冗長さが目立ってしまうのだが、その点では大友の作品に対する思い入れのようなものも窺える表現が端々に聴かれたことで、大筋では堅実な中に情熱も感じさせた好演であった。(9月16日・ザ・シンフォニーホール)
(C)福本 健

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