第141回定期演奏会2010年01月15日(金)
【作曲家の肖像画】 =チャイコフスキー生誕170年=
指 揮 : 小林 研一郎
チェロ : 遠藤 真理
チャイコフスキー : 弦楽のためのセレナード ハ長調 Op.48
チャイコフスキー : ロココ風の主題による変奏曲Op.33
チャイコフスキー : 交響曲 第3番 ニ長調 Op.29「ポーランド」

※シェフからのメッセージ
▽曲目解説

◆ 指揮にコバケンこと小林研一郎を迎えた今回の定期は、【作曲家の肖像画】というタイトルによる第1回目として、今年が生誕170年の記念年となるチャイコフスキーがとり上げられた。
 最初は「弦楽のためのセレナード」で、オーケストラの定期ならではの大編成の弦楽合奏による演奏である。チャイコフスキー自身が弦楽器は多いほど良いと考えていたというから、その意図に添った編成と言えよう。それは、小編成のアンサンブルからは得られない豊かな音量と響きの厚さに特徴付けられている。その一方で、編成の大きさからくる動きの鈍重さを少し感じさせたのも事実。テンポが少し遅めであったのも、その編成からくるものだろうが、表現はあまり几帳面さを感じさせないテンポやリズムの変化に彩られており、この編成からは不可能と思えるほどの弱音を活用しながら、チャイコフスキーの旋律美をたっぷりと強調していた。しかし逆に旋律重視に傾き過ぎて、その他の声部の存在意義が薄くなってしまったと思えるところも多々あったし、全体にもう少し洗練味が欲しいと感じられたりもしたが、これがいかにもロシア的なチャイコフスキーと言えるのかも知れない。
 続いて演奏されたのは独奏チェロと管弦楽のための「ロココ風の主題による変奏曲」で、ソロは遠藤真理。遠藤は東京芸大とザルツブルクのモーツァルテウムで学んだ若手で、すでに優秀なチェリストとして活躍中とのことだが、確かに豊かで美しい音と安定度の高いテクニックの持ち主である。そしてその音は艶やかさと華やかさも合わせ持っていて、なかなかに魅力的。最近の若手は、優れたテクニックのみに頼って、音楽的には味気ない演奏を聴かせる人も少なくないが、遠藤の演奏は大変に良く歌っていて、表情豊かなところが良い。自らが感じたことを率直に、しかも瑞々しく表現できる力量を高く評価したい。それに対してオーケストラは、ソロを立て過ぎて、あまりに伴奏に徹し過ぎた印象。曲が進むほどに音量的には次第にチェロに対抗するようにはなったが、ソロの表現に応じた表情の豊かさにまでは至らなかった。
 最後は、実演で聴く機会はきわめて少ない交響曲第3番「ポーランド」だが、録音されたディスクで聴くよりは、やはり生演奏ならではの熱気が伝わって楽しめた。コバケンもそれほど人気があるとは思えないこの曲を、わざわざとり上げるほど特に思い入れのある曲なのか、全曲暗譜での演奏である。全5楽章という構成と、交響曲としてのまとまりという点でいささか分が悪い曲とは言え、至るところにチャイコフスキーらしい味のあるメロディが顔を出すので、難解な曲とは言えない。冒頭楽章は少し調子に乗り切らない印象を与えたものの、楽章が進むほどに表情に陰影が加わり、美しい部分が多くなった。コバケンらしからぬ透明感のある響きや「弦セレ」でも聴かれた繊細な弱音の活用など、コバケンの演奏としてはこれまでで最もデリカシーを感じさせる演奏であった。“炎のコバケン”の持ち味でもある暴力的なまでの強音が顔を出さなかったことも幸いした。
(1月15日・ザ・シンフォニーホール)
(C)福本 健

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