第147回定期演奏会2010年07月23日(金)

【風土と様式の調和】
指    揮 : キンボー・イシイ=エトウ(首席客演指揮者)
ヴァイオリン : 小林 美恵

フォーレ   : パヴァーヌ 作品50
ブルッフ   : スコットランド幻想曲 作品46
シューベルト : 交響曲 第5番 変ロ長調 D485
☆シェフからのメッセージ
▽曲目解説


◆ このところ好調で、毎回の定期が充実して楽しめていた大阪交響楽団だが、今回は少し物足りなさを残す結果となった。指揮は当楽団首席客演指揮者のキンボー・イシイ=エトウで、丁寧にカッチリと仕上げる能力は示していたものの、演奏を魅力的なものにする何かが、今ひとつ足りなかったからである。
 冒頭に演奏されたのはフォーレのパヴァーヌで、抑制気味の音量でデリケートに表現しようとしているのは分かるし、アンサンブルも破綻なくまとめられていたにもかかわらず、この曲の持つたおやかな雰囲気やほのかに匂い立つような香りには不足したのが残念だった。
 続くブルッフの「スコットランド幻想曲」では、小林美恵が独奏に招かれた。小林は、かつて聴いたところでは、しっかりとした技巧の持ち主という印象だったのだが、今回は不調だったのか、それとも作品との相性が悪かったのか、あまりに満足できない演奏に終始した。いくらか線が細いと思われる音自体は美しいと言えるのだが、楽器の鳴りが悪くて音量不足を感じさせるし、ヴィブラートが深くて少し品の無さにも繋がっている。最も不満だったのは、技巧の切れにシャープさが欠け、音の移行などヌメヌメとした印象で音程の甘さにもつながっており、いささか気持ちが悪い。特に重音奏法の時にそれが顕著だった。序奏や第1楽章など、確かに美しいと思える部分もあったが、表現はほとんど強弱のみによっており、ニュアンス不足は否めない。特に第4楽章など、技巧的難度の高いところは、ただ遮二無二に音にしているだけで、こういうところでこそ欲しい鮮やかさはほとんどなかった。正直、小林美恵はどうなってしまったのだろうという思いが残った。そのようなソロに対してオーケストラは、少し鳴らし過ぎの傾向はあったものの、まずまず堅実な演奏だったと言える。あまり出来の良くなかったソロに対しているだけに、これ以上の豊かな表現を求めることは無理だろう。
 最後はシューベルトの交響曲第5番。今回の定期の中では、これが最もまとまりのある演奏だった。とにかく堅実に音にしており、若いシューベルトの瑞々しい感性が発揮された楽想などを無難に音にしていたのは確かである。ただし、その表現は、余計なことはしないで作品そのものに語らせるという姿勢なのか、楽譜の指示に従っている以上の何かを感じさせるものではなかった。古典的な交響曲の様式に倣った作品だけに、楽譜に忠実に演奏するという行き方は確かにひとつの方法だろうが、それでも楽器間のバランスやオーケストラとしての響きのまとまりなどには、それなりの配慮を施すべきだろう。また、生きた音楽としては、ほとんどイン・テンポで何事もなく音が流れていくのではなく、もう少しリズムの伸び縮みや間の取り方などに主張があって欲しいし、楽想が変わったり調性が変化した時には、それに応じた色合いの変化も必要だろう。堅実さのみが強調されて、どんな時にも空気が変わらないという演奏は、やはり聴いていて魅力がない。
(7月23日・ザ・シンフォニーホール)
(C)福本 健

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