第166回定期演奏会2012年05月28日(月)


【 二人のリヒャルト 】 

指 揮 : 児玉 宏(音楽監督・首席指揮者)
ピアノ : 石井 克典 ★

リヒャルト・シュトラウス: 組曲「町人貴族」作品60★
リヒャルト・ヴェッツ  : 交響曲 第2番 イ長調 作品47
☆シェフからのメッセージ
▽曲目解説


◆ 音楽監督の児玉宏は、前々回の定期(第164回)の時に体調不良で降板したが、その後復調したようで、今回は元気な姿で登場してくれた。その児玉の指揮で演奏された今回の定期は、《二人のリヒャルト》と題され、19世紀末から20世紀前半にかけて活躍したリヒャルト・シュトラウスとリヒャルト・ヴェッツの作品がプログラムされた。ヴェッツは、児玉が大阪響定期で続けている知られざる作曲家あるいは作品の一環に位置づけられるもので、今回取り上げられたのは交響曲第2番である。一方のシュトラウスは有名作曲家だが、小編成のオーケストラに難技巧を盛り込んでいるため、実演に接する機会は決して多くない組曲「町人貴族」という選曲。
 最初にシュトラウスが演奏されたが、まさしく小編成で、各パートが独奏楽器のように書かれているところが多い上に、シュトラウスらしい動きの難しいフレーズも多いので、正確に音にするだけでも大変そう曲であることがよく分かる。必ずしも出番が多いわけではないが、重要な働きをするピアノに、このオーケストラと相性の良い石井克典を迎えていたことも、意気込みの表れだろう。その石井やコンサートマスターの森下幸路を初めとして、ソロのフレーズを担った奏者すべてが健闘していたし、児玉も少しも杓子定規になることのない拍子感で音楽を自在に動かしながら、表情豊かに聴かせてくれた。実演でこれだけの精度と表情の豊かさで演奏できたこと自体に賛辞を贈りたいと思う。もちろん、技術的にはもう少し緻密であって欲しいところもないではないし、曲が進むほどに改善されたとは言え、表情にもっと活気が欲しいと思えるところもあったのだが、まずはこれだけの演奏が出来れば立派と言わざるを得ないだろう。
 後半のヴェッツは、1919年に書き上げられた交響曲第2番で、スケルツォ楽章を欠いた3楽章構成の曲だが、その時代としてはいささか時代後れの感を抱かせる音楽で、それは作品の調性がイ長調と明記されていることからも窺える。それはしかし、時代後れと言うより、ほとんどブルックナー風と言って良い音楽で、ヴェッツ自身がブルックナーに傾倒していたことを再確認させるほどのものである。ただ、個人的にはブルックナーよりも旋律そのものやその扱いに愛嬌があるように思われるし、響きもブルックナーのようなオルガン的なものをあまり感じさせないことも、この曲を聴きやすいものにしているように思われる。そしてロマンティックな趣が非常に強く、魅力的な部分も少なくない。まさに遅れてきたロマン派作曲家といったところだろうか。そして児玉の指揮も、そうした魅力を存分に引き出すように、旋律をたっぷりと歌わせながら、大きな起伏で表情豊かに表現していた。ただ、弱音から中弱音のデリケートな美しさに対して、強音はまさにブルックナー風に壮大に鳴らしており、いささか鳴らし過ぎの感を持ったのも事実。それが作品の求めている響きなのかも知れないが、そもそもブルックナーほど響きが厚くないように感じられるので、もう少しコントロールが効いたほうが、ブルックナー風でないヴェッツらしさが出たのではないかという気がしたのである。とは言え、総体的には作品の持ち味を知らしめるのに十分な力演かつ出来映えであり、またまた珍しくも魅力ある作品を実演で聴くことができた喜びを味わわせてくれたことに感謝したい。
(05月28日・ザ・シンフォニーホール)
(C)福本 健

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