大阪シンフォニカー交響楽団のプレ〈オーケストラの日〉コンサートにようこそ〜曲目解説ズドンッ!とお腹にひびく、とびっきり勢いある音。空からキラキラと宝石が降ってくるような素敵な音。思わず体が動き出しそうなくらい生き生きしたリズムをもった音。そして時には、ほんのり甘くてやさしい音。オーケストラが奏でる音って、人の心に色々な想像力を呼び覚ます、不思議な魔法のようなものかもしれません。
コンサートの幕開けの作品は、“音楽の都”といわれるオーストリアのウィーンに生まれた、ヨハン・シュトラウス2世(1825-99)作曲の喜歌劇「こうもり」序曲です。この喜歌劇は、友人アイゼンシュタインのしわざで、変てこな「こうもり博士」とあだ名されたファルケ博士が、その友人にこっそりと仕返しを企むという大人のいたずら話。劇中の楽しい歌や、ウィンナ・ワルツ風のウキウキするメロディがギュッと詰まったにぎやかな序曲をお楽しみください。
続いては、オーストリアのザルツブルクに生まれた作曲家モーツァルト(1756-91)の作品、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」より第1楽章をお届けしましょう。曲の名前は、何だかカタカナがたくさん並んだ風変わりな呪文のようですが、これはドイツ語で、日本語にしてみると「ちいさな夜の音楽」という意味になります。弦楽器だけの美しい合奏で演奏され、軽やかで澄みわたった曲の出だしからして、モーツァルトの気品ある音楽の魅力がたっぷりです。
北国ノルウェーに生まれたグリーグ(1843-1907)は、作家イプセンの書いた、夢見がちでほらふきなペールという若い男の奇想天外な人生の旅物語に沿うように、26曲からなる劇音楽「ペール・ギュント」を作曲しています。その中の“朝”は、すがすがしい北欧の大自然を感じさせる音楽ですが、ところがどっこい、実はペールが旅路でたどり着いたモロッコの、サハラ砂漠で迎えた日の出の情景をあらわしています。そして“山の魔王の宮殿にて”は、魔王の住む山の宮殿に向かうペールを、不気味な魔物たちが待ち構えているおどろおどろしい場面の音楽です。最初は静かに、しかしだんだん早く激しく、胸が波打つような劇的な響きになってゆきます。
作曲家スッペ(1819-95)はウィーンで活躍し、数々の喜歌劇を書きました。残念ながら、その多くは今ではあまり演奏されることはなくなってしまいましたが、華やかな軍人の生活を描いた喜歌劇「軽騎兵」の序曲は、トランペットによる厳かなファンファーレに始まり、ギャロップするような心弾むメロディがあらわれたりと、オーケストラ入門にぴったりの魅力的な曲として親しまれています。
イギリス生まれの作曲家エルガー(1857-1934)は、ノーブルで格調高い作品を多く残しました。「愛の挨拶」は、エルガーが婚約者アリスに捧げたピアノ曲で、後にオーケストラ用に編曲されました。夢見るようなシンコペーションのリズムと一緒に流れゆく愛らしいメロディは、正にエルガーの幸せな気持ちそのもののようです。
プログラムの最後には、ドイツのボンに生まれ、ウィーンで活躍した作曲家ベートーヴェン(1770-1827)の登場です。やはり何と言っても「ジャ・ジャ・ジャ・ジャーン」で始まる交響曲第5番の第1楽章が断トツに有名ですが、交響曲第7番の第1楽章も、音楽的な魅力では全く負けていません。バンッ!と明るく弾ける音のキラめきに始まり、重厚なメロディが生まれるかと思えば、音楽はサッと衣装がえをして、ヒラリと空を舞うような軽やかなリズムを身につけ、ぐんぐんとエネルギーを放ってゆきます。まるで血が通って生きているような音楽にきっと出会えることでしょう。
村田英也(音楽評論家)