2005年04月12日 第100回定期演奏会曲目解説
◇二十五年の交響楽団の道程と輝かしい未来に向けて◇
大阪シンフォニカー交響楽団は、1980年9月、音楽監督・常任指揮者 小泉ひろし、コンサートマスター 亀田美佐子、団員50名で大阪シンフォニカーとして発足し、翌年3月、森ノ宮ピロティホールにおける第1回定期演奏会で交響楽団の第一歩を踏み出した。大阪シンフォニカーは新世紀初頭、2001年1月「大阪シンフォニカー交響楽団」と改称、意を新たにして演奏活動に取り組んで来た。そして、今年、大阪シンフォニカー交響楽団は創立25周年を迎えた。今回の第100回記念定期演奏会は大阪シンフォニカー交響楽団の歴史に新たな一ページを加える最初の定期演奏会である。この記念すべき演奏は、昨年9月、ミュージックアドバイザー・首席指揮者に就任した大山平一郎の指揮によって披露されることとなった。 大山平一郎は京都西陣、大徳寺の近くの町家の生まれ。彼の父、大山平四郎は著書「龍安寺石庭 七つの謎を解く」(淡交社)でも知られる龍安寺石庭の研究家で、その住まいには美しい石庭が残されている。大山平四郎はヴァイオリンが好きで、自分が適えられなかったヴァイオリンの夢を息子に託し、早くから息子にヴァイオリンを習わせた。大山平一郎(愛称・平ちゃん)はヴァイオリニスト・東儀祐二に師事してヴァイオリンを習い始めたが、ノートルダム小学校、市立烏丸中学校の時に学生音楽コンクール・ヴァイオリン部門で入賞を重ねた。そして、平ちゃんは江藤俊哉の薦めもあって、東京に出て桐朋学園へ進む決心をした。いま、私の手元に、大山平一郎の名前と可愛らしい写真が載っている烏丸中学校昭和38年(1963年)卒業写真がある。これは私が昭和34年春にこの中学校の音楽担当教諭として赴任し、たまたま、この卒業クラスの担任だったからで、当時、平ちゃんは卒業学年にも関わらず、江藤俊哉にヴァイオリンを習いに東京へ何度も通い、桐朋受験のために私の家に来て音楽通論などを一生懸命勉強した。これはそのころの思い出のアルバムである。
こうして、大山平一郎は東京に出て高校・大学と桐朋学園で学び、江藤俊哉、鷲見三郎、斎藤秀雄に師事。その後、イギリスのギルドホール音楽学校で学び、インディアナ大学コンクールでヴァイオリン・ヴィオラ両部門で同時優勝を果たして一躍、アメリカでの演奏活動が本格化した。 1978年夏、カナダ・オンタリオ州ロンドンのウェスタン・オンタリオ大学でISME国際音楽教育学会が行われたが、その時、私は平ちゃんにアメリカの主な音楽祭のチケットを手配してもらったことを思い出す。因みに、その中から1978年7-8月、第6回サンタフェ室内楽音楽祭のプログラムを出して見ると、出演者プロフィールに平ちゃんは次のように紹介されている。「第5回フェスティバルから出演している大山平一郎は、ニューヨーク・ヤング・コンサート・シリーズの演奏で評論家から常に高く評価されてきた。1974年ヤング・コンサート国際オーディションに入賞、1975年ニューヨーク・デビュー。大山平一郎はイギリスで学んだあとインディアナ大学音楽学部で学び、ヴァイオリンをヨゼフ・ギンゴールド、ルジェーロ・リッチ、ヴィオラをウィリアム・プリムローズ、室内楽をヤーノシュ・シュタルケルに師事した。マルボロ音楽祭、プエルトリコのカザルス・フェスティバルに出演、5年前からサンタ・クルツのカリフォルニア大学で音楽の助教授を務めている。」(プログラムより抜粋)もの凄い成長ぶり!というのが実感だった。 こうして、1979年、カルロ・マリア・ジュリーニのロスアンジェルス・フィルハーモニックの首席ヴィオラ奏者。1982年、サンタ・バーバラ室内オーケストラ、1985年にノースウエスト室内オーケストラの音楽監督兼指揮者に就任。1986年、アンドレ・プレヴィンの任命でロスアンジェルス・フィルハーモニックの副指揮者に就任、指揮活動が本格化し、1991年4月、京都市交響楽団第333回定期演奏会で日本デビュー。1999年、九州交響楽団の常任指揮者に就任し日本での指揮活動に拍車がかかる。そして、2004年9月、大阪シンフォニカー交響楽団のミュージックアドバイザー・首席指揮者に就任、今回の第100回記念定期演奏会で大阪シンフォニカー交響楽団の輝かしい未来に向けて新しいステップを飾ることとなった。 第100回記念定期演奏会は、交響曲第1番「指輪物語」、交響詩「ネス湖」、吹奏楽のための「水族館」などの作品で日本の吹奏楽ファンにも親しまれているオランダの作曲家ヨハン・デ=メイによる「祝典ファンファーレ」(大阪シンフォニカー交響楽団委嘱作品)で開幕する。続いて、ブラームスがドイツのブレスラウ大学から名誉博士の称号を贈られ、その返礼として作曲した「大学祝典序曲」が演奏され、この明るく開放的な気分に満ち溢れたブラームスの祝典序曲のあと、モーツァルトの「オーボエ協奏曲 ハ長調」が演奏される。長年ドイツのオーケストラで活躍し世界的に評価の高いオーボエ奏者・宮本文昭の協演によってモーツァルトの美しく伸びやかなオーボエ協奏曲を楽しんだあと、ブラームスが20年の歳月をかけて完成した「交響曲 第1番 ハ短調」の壮大な調べとともに第100回記念定期演奏会の幕が閉じられる。
■プログラム・ノート■
デ=メイ:祝典ファンファーレ(大阪シンフォニカー交響楽団委嘱作品)
編成:ホルン4、トランペット3、トロンボーン2、バストロンボーン、テューバ、ティンパニ、テュービュラー・ベル、シンバル、タムタム
曲の構成:ハ長調 4/4拍子 タムタム、シンバル、バス・トロンボーン、テューバによる重々しい序奏に応えてホルンが厳粛に開幕のファンファーレを奏でる。その調べは巧みに調を転じてトロンボーンからトランペット、全奏(トゥッティ)へと引き継がれて高まっていく。ここで、曲は3/4拍子に変わり、少しテンポを速め、ホルン、トロンボーンが弱奏で和やかに祝祭のメロディを奏でる。これをトランペット、トロンボーンと順次、音調を高めて反復する。そして、再び4/4拍子に戻り、開幕の調べが全奏で力強く奏され、壮大に祝典ファンファーレを結ぶ。
ブラームス:大学祝典序曲 Op.80
ブラームスは1879年3月、ドイツのブレスラウ大学から名誉博士の称号の申し入れを喜んで受け取り、その返礼として1880年夏、オーストリアのイシルで「大学祝典序曲」を作曲した。ブラームスは楽しい四つのドイツの学生歌「我らは立派な校舎を建てた」「国の親父」「新入生の歌」「だから愉快にやろうじゃないか」を取り入れて、自作の主題と組み合わせてこの序曲を完成した。
編成:ピッコロ1、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット1、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、大太鼓、シンバル、トライアングル、弦5部
曲の構成:ハ短調、アレグロ、ヴァイオリンが奏でる第1主題は遠くから近づく学生たちの行進のように次第に強まり、金管が朗々と第一の学生歌「我等は立派な校舎を建てた」を奏でる。再び力強い行進と第1主題が奏され、続いて、抒情的な第二の学生歌「国の親父」が第2ヴァイオリンで奏される。ここでテンポは速まり、第三の学生歌「新入生の歌」をファゴットがスタッカートで吹き始める。この最もユーモラスな歌で曲は最高に高まり、第1主題を軸にした展開のあと、再現部に入り三つの学生歌が再現、そして、最後に第四の学生歌「だから愉快にやろうじゃないか」が高らかに奏され歓喜の歌声とともに曲を結ぶ。
モーツァルト:オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314(285d)ベーレンライター1981年版
このオーボエ協奏曲は、ベルガモ出身でザルツブルクの宮廷のオーボエ奏者ジュゼッペ・フェルレンディスのために1777年4月1日から9月23日の間に作曲されたが、その後、モーツァルトはドジャンの性急な作曲依頼に応じるために1778年1月または2月に旅先のマンハイムでこのオーボエ協奏曲をそのまま1音高く移調してフルート用に編曲し「フルート協奏曲 ニ長調」をドジャンに送った。このオーボエ協奏曲は「フルート協奏曲 ニ長調」の原曲で、モーツァルト21歳のときの作品である。
編成:独奏オーボエ、オーボエ2、ホルン2、弦5部
第1楽章 アレグロ・アペルト ニ長調 4/4拍子 協奏風ソナタ形式 「アレグロ・アペルト」(快速に、はっきりとした)と記された通り、二つの主題が明るく溌剌とした動きで展開され、カデンツァでオーボエの音色と技巧を楽しませて楽章を閉じる。
第2楽章 アダージョ・ノン・トロッポ ト長調 3/4拍子 ソナタ形式 緩やかなテンポに乗せてオーボエによる第1主題とオーボエ、ヴァイオリンが掛け合って提示する第2主題の展開で抒情的な流れが象られる。
第3楽章 ロンド アレグレット ニ長調 2/4拍子 軽快なロンド オーボエによる第1主題と第1ヴァイオリンによる第2主題の提示、独奏オーボエの華やかな技巧的な展開によって活発に曲を結ぶ。
ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 Op.68
「交響曲第1番」の作曲は1876年にリヒテンタールで完成、11月4日カールスルーエ宮廷劇場でフェリックス・オットー・デッソフ指揮により初演された。ブラームスが23歳で着手し、43歳で完成させたこの曲にはブラームスのベートーヴェンの交響曲に対する深い想いが刻み込まれている。
編成:フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦5部
第1楽章 ウン・ポコ・ソステヌート ハ短調 6/8拍子 ティンパニの打音とともにヴァイオリンで主奏される序奏主題は曲全体と構成的な繋がりを持つ。ティンパニの強い打音とともに主部アレグロに入る。主部はソナタ形式で、ヴァイオリンによる情熱的な第1主題とオーボエの主奏による下降的な旋律で第2主題が提示され、この二つの主題によって情感豊かに展開され、厳粛な響きで静かに終わる。
第2楽章 アンダンテ・ソステヌート ホ長調 3/4拍子 三部形式 緩やかな弦楽の流れにオーボエ、第1ヴァイオリンの美しい旋律奏が続き、次第に他の楽器が加わる。後半、独奏ヴァイオリンが効果的に曲想を高め、ティンパニの弱い連打音で終止する。
第3楽章 ウン・ポコ・アレグレット・エ・グラツィオーソ 変イ長調 2/4拍子 三部形式 クラリネットの穏やかな旋律で始まり、やがて軽快なダンスが始まる。中間部に入り「運命」主題を想起させる動機と「死の動機」といわれる下へ沈むような旋律動機が現れる。中間部が終わると冒頭部分に戻り、少し中間部を回想して最終楽章へ入る。第4楽章 序奏部 アダージョ ハ短調 ピウ・アンダンテ ハ長調 4/4拍子 序奏はハ短調で重い雰囲気で始まり、やがてホルンがハ長調でアルペンホルンを想わせる旋律(ブラームスがクララの誕生日に贈った歌)を朗々と奏する。主部アレグロ・ノン・トロッポ・マ・コン・ブリオ ハ長調 ソナタ形式 続いて弦楽による品位高く力強い第1主題(「第9」合唱主題に似た動機を持つ)で主部に入る。ヴァイオリンで奏される第2主題は柔らかい表情を持つ。曲はこの二つの主題によって展開され、対位法的に激しい迫力をもって感動的に全曲を閉じる。(無断転載を禁ずる)音楽評論家 (C)中原昭哉