2009年01月16日第131回定期演奏会〜曲目解説
モーツァルト
交響曲 第25番 ト短調 K.183(173dB)

 1773年3月、モーツァルト(1756−1791)は、ザルツブルグでイタリア風の交響曲を、立てつづけに4曲も作曲した。ところが、7月にウィーンに行ってから、突然、作風が一変した。このト短調の曲は、10月5日にザルツブルグで完成されたが、ここではドイツ=オーストリア風ともいえる性格が端的に示されている。この曲は当時としてはめずらしくト短調という暗い調を採用したが、モーツァルトの交響曲で短調の作品は、この曲と後年の「第40番ト短調K.550」しかない。したがって、この第25番は「小ト短調」と呼ばれている。
 この曲はト短調という暗い調を採用したため、17歳の少年の作品とは思えない悲愴美と深刻な内面が表わされている。当時の短調の交響曲は、宗教的なキリストの「受難」を表わすために書かれたというが、モーツァルトの曲は、そうした宗教的な意図とはかかわりなく、個人的な苦悩の体験から生まれたのではないだろうか。
第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ ト短調 4/4拍子
ソナタ形式で書かれ、シンコペーション・リズムとあらあらしい旋律が特徴的である。
第2楽章 アンダンテ 変ホ長調 2/4拍子
ソナタ形式。両端部分は弱音器付の弦とファゴットが中心となる。
第3楽章 メヌエット ト短調 3/4拍子
3部形式。中間部のトリオは管楽器のみで演奏され、ト長調に転じる。
第4楽章 アレグロ ト短調 2/4拍子
ソナタ形式。きわめて構築的である。

ハチャトゥリアン
ピアノ協奏曲 変ニ長調

 アラム・ハチャトゥリアン(1903−1978)はグルジア生まれのアルメニア人である。したがって彼の音楽は、ロシア人とは違った中東的な特色を誇っているが、その強烈なリズムや独特の旋律美によって広く世界的に愛好された。彼は3曲の協奏曲を作曲したが、そのなかでは、まずヴァイオリン、次にピアノが一般的に知られている。
 ハチャトゥリアンは1934年、31歳でモスクワ音楽院を卒業したが、「ピアノ協奏曲」はその2年後の作品である。この曲は1937年7月12日、レフ・オボーリンのピアノ、シテインベルク指揮でモスクワで初演され、オボーリンに献呈された。この演奏は大成功を収め、ハチャトゥリアンは一躍ソ連の代表的な作曲家の一人と認められた。
 曲は3楽章からなり、アルメニアの民族的旋律や舞曲のリズム、トビリシの町の歌を種々採り入れており、それらがピアノの名技的な表現を中心として、華麗な趣きと叙情を交錯させる。これは現代のピアノ協奏曲でも、特異な傑作といわねばなるまい。
第1楽章 アレグロ・マエストーソ 変ニ長調、3/4拍子
ソナタ形式。管弦楽のはなやかな序奏部にはじまる。ピアノが力強く第1主題を紹介する。オーボエ独奏の第2主題は、コーカサスの吟遊詩人の音楽に由来しているらしい。
第2楽章 アンダンテ・コン・アニマ イ短調、3/4拍子
3部形式。きわめて東方的で、中間部はトルコ風といわれている。第49ー80小節にはフレクサトンのソロが加わる。
第3楽章 アレグロ・ブリランテ ハ長調ー変ニ長調、2/4ー3/4拍子
ロンド風の終曲。冒頭で現われる主題は、第1楽章第1主題と関連している。中間部では別の精力的な主題が出る。

チャイコフスキー
交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」

 チャイコフスキー(1840−1893)の最後の交響曲。1893年の8月末か9月に完成され、初演は同じ年の10月28日、チャイコフスキー指揮によってサンクト・ペテルブルグで行われた。このときには、まだ「悲愴」という標題はなかった。チャイコフスキーは初演後、弟のモデストと標題について相談し、モデストの提案で「悲愴」と命名された。
 ところがチャイコフスキーは、初演後1週間もたたないうちにコレラにかかり、11月6日に急逝した。コレラ流行の最中に生水を飲んだこと、この曲が非常にペシミスティックであることなど、いろいろな理由で、自殺説も唱えられた。
 いずれにしても「悲愴」は悲観的な、厭世的な内容である。それはスラヴ人特有の内面告白であり、さらに人間全体に共通する苦悩や不安の表明といえる。つまり、この交響曲は、きわめて主観的であるにもかかわらず、実は普遍的な内容をもっているのである。
第1楽章 アダージョーアレグロ・ノン・トロッポ ロ短調 4/4拍子
序奏の付いたソナタ形式。主部の第1主題は序奏の主旋律と同じ素材による。アンダンテでニ長調の第2主題が出る。そしてアレグロ・ヴィーヴォに急変すると劇的な展開部に移る。
第2楽章 アレグロ・コン・グラツィア ニ長調 5/4拍子
3部形式。5拍子は珍しいが、これはロシア民謡に多い。中間部はロ短調。ティンパニが単純なリズムを刻む。
第3楽章 アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ ト長調 4/4(12/8)拍子
スケルツォと行進曲を合わせた展開部のないソナタ形式。主題はタランテラ風。中間部のあと行進曲風の主題が導入される。
第4楽章 フィナーレ、アダージョ・ラメントーソ ロ短調 3/4拍子
自由な3部形式。悲痛な暗い主題が印象的である。中間部はニ長調で、心を揺さぶるようなクライマックスを築く。終結部も暗い。

(C) 小石 忠男(音楽評論家)(無断転載を禁ずる)


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