2009年5月29日 第135回定期演奏会
■シェフからのメッセージ

 皆さん、当シリーズもいよいよ第3回目。今回は超有名曲のわりにオーケストラの定期演奏会で演奏されることのないベートーヴェンの「田園」と、全く無名が故に演奏もされないツェムリンスキーの交響曲第2番をとりあげます。
 先日読んでいた本に、女性が意中の男性を落とすなら、まず「才能を評価し」ついで「ルックスを称える」のが一番効果的とあって、なるほどと思っていたのですが、今回とりあげるツェムリンスキーとアルマ・シントラー(後のグスタフ・マーラー夫人)の場合、ツェムリンスキーには少々気の毒な結果に終わってしまいました。アルマは彼の才能を高く評価し、作曲の生徒になります。作曲のレッスンを通じて二人の仲はどんどん深くなるのですが、周りからは反対の圧力が。結局この関係はアルマがグスタフ・マーラーと知り合い、電撃婚約、結婚するに至って終わりを告げるのですが、この中でアルマ自身がツェムリンスキーの容貌を醜いと表現し、そのことが彼にとって終生心の傷になったと聞くと、同情の念を禁じえません。ツェムリンスキーの写真や肖像画がいくつか残されていますが、そんなに醜いかなあ? マーラーと比べてどっちもどっちじゃ、などと勝手なことを考えてしまいます。まあ容貌というのはあくまで主観によるものですから、他人の私がとやかく言ってもはじまりませんが。
 それに対してツェムリンスキーの才能に関しては折り紙つきでした。指揮者としても大変優れていたそうで、晩年のストラヴィンスキーも「私がこれまで聴いた指揮者の中で、最も抜きん出ていたのはツェムリンスキーである」と回想しているほどです。作曲家としての彼を高く評価し、そして助力を惜しまなかったのがブラームスでした。自身が推進した作曲コンクールで、ツェムリンスキーのクラリネット3重奏曲が三等を受賞すると、出版社に紹介するなどして若い作曲家を励ましました。ブラームスの死後4ヶ月目に書き上げられたのが、今回演奏する交響曲第2番です。この曲の終楽章はパッサカリアで書かれており、同じ形式で書かれたブラームスの交響曲第4番の終楽章をおそらく意識した、ブラームスへのオマージュになっています。翌年この交響曲は、そのブラームスが大きく関わっていたベートーヴェン作曲賞で、栄えある一等を受賞しました。
 前回のフックスの弟子でもあるツェムリンスキーのこの曲は、保守的だった師の曲に比べるとずっとモダンですが、後の彼特有の作風にくらべればまだまだ古典的です。ブラームスとドヴォルザークにブルックナーをまぶしたような。えっ、相変わらず想像がつかない? では5月29日にザ・シンフォニーホールでお会い致しましょう。

大阪シンフォニカー交響楽団正指揮者 寺岡清高

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