2009年6月19日(金)第136回定期演奏会
■シェフからのメッセージ

児 玉   宏


ジークフリート・ワーグナーは、楽劇創始者リヒャルト・ワーグナーを父に、交響詩の創始者フランツ・リストを祖父に持つという奇遇な宿命を背負って、1869年スイスのチューリッヒで生まれた作曲家です。
「ヘンゼルとグレーテル」で有名なフンパーディンクの下で作曲を、ハンス・リヒターやモットルらの下で指揮を学びました。 1906年にはバイロイト祝祭劇場の総責任者となり、1930年に死ぬまで、演出家・指揮者として活躍しました。
父リヒャルトのように自ら台本を書き下ろしたオペラ作品が17本、交響曲・交響詩・ヴァイオリン協奏曲など、広い分野の作品を残していますが、「ワーグナー家の天才はリヒャルトだけ」という母コジマの傲慢な政策に因り、作品上演が禁止されていました。
さらに、彼の死後、祝祭劇場の総責任者となった妻ウィニフレッド・ウィリアムスがアドルフ・ヒットラーと親交が深かったため、第二次世界大戦後も、長い間、その作品上演が難しく、忘れられた作曲家になっていました。
1914年に作曲されたオペラ「異教徒の王」は、第一次世界大戦を直前にして緊迫するヨーロッパの中で、「何を価値観として信仰するのか」という大きな問いを投げかけています。
また、1924年に作曲された交響詩「幸福」は、戦後の恐慌と通貨危機の中で喘ぐ敗戦国ドイツの中で、「人間にとっての幸福は何か」という大きな主題を基に作曲されています。
日本では「ヴァイオリン協奏曲ト短調」でその名前を知られているブルッフは、1838年ケルン生まれ。オペラ・オラトリオ・交響曲・歌曲・合唱曲など、様々な作品を残したドイツの作曲家です。 ワーグナーを筆頭とする「新ドイツ主義」とは距離を置き、ウェーバーやメンデルスゾーンの伝統を引き継いだ、親しみやすい作品を書きました。
・・・というわけで、今回のキーワードは「忘れられた作曲家」です。

大阪シンフォニカー交響楽団 音楽監督・首席指揮者
児玉  宏 

HOME |プログラム公演批評