2009年10月16日(金)第139回定期演奏会
■シェフからのメッセージ
児玉 宏
同じ一つの言葉でも読む人によって受け取る感触が異なりますが、こうした「解釈に対する柔軟性を作品内部に秘めていること」は狭いヨーロッパの民俗音楽に過ぎない「クラシック音楽」が、時代や文化を超えて「今を生きる人たち」に何かを伝えることが出来てきた原動力なのではないでしょうか。
本日皆様に聴いて頂く5曲のオーケストラ伴奏付き歌曲は、シューベルトの“美しい水車小屋の娘”やシューマンの“女の愛と生涯”のように「歌曲集」として作曲されたものではありません。曲目も演奏する順番も、私が独断で選んだものです。
<東の国から来た三人の聖なる王>は、「夜空に現れた不思議な輝星に導かれて生誕直後の幼子キリストを訪ねた三人の王様の話」ですが、オペラや交響詩で手腕を見せた作曲家だけに、短い前奏の中で幼子の運命を予言するだけでなく、比較的長い後奏を使って「宿命の悲劇」の後に訪れる輝かしい勝利をも示唆しています。<子守歌>は、眠りに就いた幼子を天から授かった花に譬えて「母親の喜び」を歌い挙げた作品。<私の眼>は、相手の存在で自分が生きる価値を見出した人の「感謝と驚嘆」の歌。そして、時間と共に消えようとする「一瞬の幸せ」を満喫しようとする<黄昏の中の夢>に続く<あした>は、一夜明けて再び昇る太陽を願望しながら「無言の至福」に思いを馳せる歌です。
私は、作曲された時間も歌詩の作者も違うこの5つの歌曲の中に「一つのドラマ」を聴くのですが、ドラマを見つめる一人の「女性」の存在に気付く時、一見共通する部分など存在しないかに見える<今回の作曲家たち>の根源に横たわる「共通するもの」が見えてくるように思います。
・・・という訳で、今回のキーワードは「聖母マリア」です。
大阪シンフォニカー交響楽団 音楽監督・首席指揮者
児玉 宏