2010年06月18日(金)第146回定期演奏会
■シェフからのメッセージ
児玉 宏
今回の「忘れられた作曲家」は、1856年11月、モスクワから東へ200Kmほど離れた町ヴラディミールに生まれ、1915年7月、モスクワで死亡した<ロシアの作曲家>“セルゲイ・イヴァノヴィッチ・タニェエフ”です。
早熟で才能に恵まれた彼は、若年10歳にしてモスクワ音楽院に入学。ピアノ・作曲・管弦楽法等を、チャイコフスキーとルービンシュタインの下で学びました。
卒業後、初めはピアニストとして活躍をしましたが、78年から母校で教鞭をとり、85年からは学長としてその責務を果しました。 数え切れない多くの教え子の中には、ラフマニノフ、グリエール、スクリャービン等の名前があります。
長年パレストリーナ、ヘンデル、モーツァルトの作品研究を重ね、対位法の大家としても名を成した彼の作品には、「ロシア的要素と西洋的作曲技法の融合」という作曲家としての大きな意図が隠され、彼の名は、ほぼ同時代を生きたグラズノフと共に、チャイコフスキーからショスタコーヴィッチへと発展していく「ロシアの交響曲」を理解する上で欠くことの出来ない、重要な鍵となるものです。
「名曲」とは何でしょうか? 何らかの理由で演奏される機会が少ない作品には、本当に文化的価値は無いのでしょうか?個々の作品を「点」として理解するのではなく、作品の価値を、過去から未来へ続く時間軸の中で、お互いの相互関係を見極めながら把握した時、個人の営みから生まれた作品は、「価値の集積」という形で歴史的財産に変質され、音楽文化を形成していくのではないでしょうか?
大阪交響楽団 音楽監督・首席指揮者
児 玉 宏