2010年07月23日(金)第147回定期演奏会
■シェフからのメッセージ
キンボー・イシイ=エトウ
16世紀に普及した宮廷行列舞曲、パヴァーヌ。
弟子であるラヴェルの”亡き王女のためのパヴァーヌ”や”眠りの森の美女のパヴァーヌ”(マメールロワ)は、師であるフォーレの描くこのパヴァーヌに、酷似しているとよくいわれます。木管とピッツィカートの絶妙な調合、柔軟な和声展開、様式に対する順応性。
たとえ師弟関係があるにしても、共存したその時代と場所という背景がなかったら、両者のパヴァーヌにこれだけの類似はなかったでしょう。
フォーレのパヴァーヌは、まさにその世代の風土を象徴している作品です。
2曲目は、ドイツでユダヤ血統を疑われつづけたマックス・ブルッフの作品、”スコットランド幻想曲”。
そんな彼にとって、異国文化との出会いは、きっと開放的であったことでしょう。スコットランド音楽博物館』という曲集から抜粋された4曲の民族的・風土的情景が、見事に描写された非常に特質な作品で、技巧的にもかなりの水準を要する曲だけに敬遠されがちだったようですが、故ヤッシャ・ハイフェッツが愛奏したことで頻繁に演奏されるようになりました。
今回は、ボクの大学時代からよく評判を耳にした小林美恵さんとの初共演になります。
最後は、シューベルトの作品。
ボクは、12歳からの7年間のウィーン在住時に、シューベルトが住んでいたとされるアパートの殆どを見て回りましたが、それぞれの住居に独特な”匂い”がしたのを今でも覚えています。交響曲5番は、彼が寄宿制学校を離れたあとまもなく書かれていますが、学友たちの寛大な支援は、その後も絶えることなく、居候先である学友宅の陶器でできたストーブの匂いまでがしてしまう作品だと感じます。
この曲の保守的様式のなかに、その暖かく叙情的な ”匂い”を楽しみたいですね。
余談ですが、ボクにとって風土とその場所の”匂い”とは、切っても切れない存在だと思っています。風土=匂い ・・・ そう、今回の定期演奏会、いっそのこと匂覚で聴いてみませんか?!(笑)
大阪交響楽団 首席客演指揮者
キンボー・イシイ=エトウ