2010年10月07日(木)第149回定期演奏会
■シェフからのメッセージ

児玉 宏


演奏用の楽譜に「様々な改訂版」が存在し、指揮者や音楽学者を悩ませ続けているブルックナーですが、この問題の発端は、今回演奏する「交響曲第二番」に始まりました。

47歳になったブルックナーが、この作品を書き上げたのは1871年のことですが、翌年行なわれた試演会では、ウィーン・フィルから「演奏不可能」と言われ、渋々タクトを取った指揮者からも「無意味な音の塊」という罵声を浴びることになります。

書き上げた作品に手を加え続けた彼を、周りの意見に翻弄され続けた「弱い人間」と捉えるか、作曲家は作品が演奏されることで初めて価値がある、という信念に基づいて、現実主義を貫き通した「強い人間」と観るのかは、決して回答を見つけることの出来ない「永遠の謎」です。

「文明と文化」という二つの異なった言葉がありますが、その違いは何でしょうか?

設計図を描くことが出来、力として再利用可能なものが「文明」であり、他との比較でその価値を決めることが出来ず、設計図を描くことも再利用することも不可能なものが「文化」であると仮定すると、一見「周りに翻弄されている」ように見えるブルックナーの中に、「存在することに意味がある」という、文化の持つ本来の存在意義にも通じる、「音楽への自信と確信」があるように思います。

私たちの演奏をお聴きになった貴方は、今回、どんな「新発見」をなさいますか?

大阪交響楽団 音楽監督・首席指揮者
児 玉  宏

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