2007年10月17日第22回いずみホール定期演奏会 曲目解説
近代音楽のアプローチ 《星のとき》 第二夜「ロマン派と現代の狭間」
人は、いつの時代でも、より美しいもの、より豪華なものを望む。オーケストラの世界でも、モーツァルトのころ20数名だった編成が、次第に拡大して、20世紀初頭には、マーラーの『千人の交響曲』まで到達した。そして、これ以上の拡大が不可能となったとき、芸術の世界では、往々として「縮小」ではなく「破壊」が起こる。20世紀初頭は、それまでの「音楽=美しいもの」という概念そのものが、リセットされた時代であった。
今日は、2つの管楽器のセレナーデと、2つの弦楽合奏曲を交互に演奏し、最後に管弦楽曲というプログラム。2つの管楽器のセレナーデは、共に、モーツァルトの『13管楽器のセレナーデ《グラン・パルティータ》K.361(370a)』に刺激を受けて生まれた作品で、成立は19世紀後半。2つの弦楽合奏曲と『マ・メール・ロワ』は、いずれも20世紀初頭ヨーロッパ各地で同時進行していた、今から丁度一世紀前の現代音楽である。
リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)の『13管楽器のためのセレナーデ作品7』は、R.シュトラウス弱冠17歳のときの作品。メンデルスゾーンやブラームスを彷彿とさせる、19世紀ドイツロマン派の響きが色濃く残っている。単なる習作ではないことは、その後、R.シュトラウスが20世紀前半のドイツを代表する大作曲家に成長したことからも証明される。
アントニン・ドヴォルザーク(1841-1904)もまた、管楽アンサンブルのための『セレナードニ短調作品44』を作曲した。ドヴォルザークはモーツァルトと勝負するために、チェコの民俗音楽をセレナードの形式に融合させた。
アントン・ヴェーベルン(1883-1945)は、シェーンベルクやベルクとともに新ウィーン楽派の中核となる作曲家で、最後の作品でさえ『作品31』と、極端な寡作曲家。ヴェーベルンの音楽は、非常に簡素で透明な響きが特徴。この『弦楽四重奏のための5つの楽章作品5』は、1909年の作品で、いわゆる無調の音楽。今日は作曲者自身により弦楽合奏に拡大されたものが演奏される。ヴェーベルンは、第二次大戦直後、避難していたザルツブルク近郊の娘の家で、駐留していた米軍の誤射により悲劇的な死を遂げた。
一方、『愛の挨拶』『威風堂々』で有名なイギリスの作曲家エドワード・エルガー(1857-1934)は、幸福な作曲家の代表格だ。8歳年上の愛妻キャロラインの献身的な後押しで、次第に作曲家としての地位を築いた。『序奏とアレグロ作品47』は、ウェールズ地方の民謡から霊感を受けた序奏と、輝かしいアレグロの部分からなる弦楽合奏曲。前述のヴェーベルンの『弦楽四重奏』とほぼ同時期に、こちらはまだ19世紀風な心地よい音楽が流れていた。
『マ・メール・ロワ』とは、英語の『マザー・グース』、つまり『きらきら星』『メリーさんの羊』などの伝承童謡のこと。また、伝説上の童謡作家として童謡集のタイトルそのものとしても使われている。子供好きだった作曲家モーリス・ラヴェル(1875-1937)が、友人であるゴデブスキ家の2人の子どもたちのために、1908年まずピアノ四手連弾の組曲として作曲。1911年に管弦楽に編曲された。
大阪シンフォニカー交響楽団ITプランナー 佐々木 修