2008年02月08日 第24回いずみホール定期演奏会
近代音楽へのアプローチ 「星のとき」 第四夜《古典の創造》
アーロン・コープランド(1900-1990)は、20世紀を代表するアメリカの作曲家。ユダヤ系ロシア移民の息子として生まれ、21歳のとき3年間パリに留学した。『アパラチアの春』は、アメリカの著名な舞踏家マーサ・グラハムのためのバレエ曲として企画され、13人編成の室内楽として1944年に初演、翌年二管編成の管弦楽に編曲された。今日はオリジナルの室内楽版で演奏される。アパラチアはアメリカ合衆国東部を北東から南西に走る大山脈。以前は、このアパラチア山脈より東側までがアメリカ合衆国で、山脈を越えた西側はインディアンだけが住むフロンティアの土地だった。舞台は19世紀初頭のペンシルバニア、アメリカ開拓民が建てた新築のファームハウスで行われる結婚式。終曲はこの作品の中で最も良く知られている楽章で、ここで奏されるシェーカー教徒の賛美歌のメロディーは、アメリカでは多くのTV-CMにも使われている。『アパラチアの春』が頻繁に演奏される背景は、このメロディーと、美しいアパラチアの自然を連想させるタイトルといっても過言ではないが、実はこのタイトル、作曲後に前述のマーサ・グラハムによりつけられたもの。
コープランドがパリに留学していたちょうどその頃、プロヴァンス生まれのユダヤ系フランス人作曲家ダリウス・ミヨー(1892-1974)は、本場のジャズに触れるためにアメリカへ渡った。そして1923年、ジャズの音階やリズムを取り入れ作曲されたのが、バレエ音楽『世界の創造』である。曲は序曲と短い5つの楽章からなり、アルト・サックスが活躍する。ちなみに翌年アメリカではジョージ・ガーシュイン(1898-1937)が、ジャズとオーケストラの見事な融合である『ラプソディ・イン・ブルー』を発表してセンセーションを起こす。世界中の若き作曲家が、ジャズに新鮮な感動を覚え夢中になった時代であった。
そのような中パリに留まり、いかにもパリジャンらしい軽妙なセンスを生かし、独自の宗教的透明感ある作品で注目されたのがフランシス・プーランク(1899-1963)である。『シンフォニエッタ』とは小交響曲を意味するが、4楽章で演奏時間29分程の立派な交響曲である。それをあえて小交響曲としたのは、マーラーに代表される1時間を越える大交響曲に遠慮したのか、あるいはプーランク自身が、ベートーヴェンやブラームスのように、主題を展開させ、構築する能力に欠けていたことを自覚していたからと推測される。
いずみホール定期演奏会は、2002年「古典派の現在(いま)」と題して、ハイドンやモーツァルトを中心にスタートしたが、今年度の「近代音楽へのアプローチ」で終了する。曲目解説冒頭の「星のとき」とは、ドイツ語圏でいう「Sternenstunde」で、星が止まるような歴史的名演を意味する。すべての曲は「星のとき」を経て、歴史に残ることを許される。先人がハイドンやモーツァルトをもう一回聞きたいと選んだように、皆様にも、もう一回聞きたい曲を選んで頂きたい。《古典の創造》をするのは、演奏者と聴衆との共同作業である。
大阪シンフォニカー交響楽団ITプランナー 佐々木 修