2005年11月13日《第39回名曲コンサートに寄せて》
◆本日は普段のオーケストラコンサートではあまり聴くことのできない、サックスにスポットライトを当てたプログラムです。サクソフォン(サックス)は、ベルギーの楽器製作者アドルフ・サックス(1814-1894)によって発明考案された19世紀最高の発明品と言われる楽器です。サックスは金属製ですが、クラリネットと同様に1枚のリード(葦)で発音されることから木管楽器の仲間です。その一番の特徴は、魅力的な、時にはその人の人生を狂わすほど官能的な音色です。
私たちがサックスを間近にするのは中学校の吹奏楽でしょうか。おそらく偶然のいたずらで、ある子供はクラリネットを選び、またある子供はその隣のサックスを選びます。そしてその子供が音楽の才能があったとすると・・・クラリネット→音大→大阪シンフォニカー交響楽団、音楽教師などのクラシック音楽の世界。そして、サックス→音大→ジャズ、スタジオミュージシャンなどのポップスの世界。運命のいたずらとはいえ、人生の大きな選択です。今日のソリスト須川展也さんは、サックス=ジャズ・ポップスという大勢の中で、例外的に、それも日本一の誉れ高いクラシックのサックス奏者です。
さて本日のプログラム。最初はベルリオーズ(1803-1869)の《ローマの謝肉祭序曲》です。ローマ留学中に恋人の結婚を知ったベルリオーズは拳銃を購入、彼女と心中をするために馬車で一路パリに向かいました。それを思いとどまらせたのは、美しい地中海の夜明けでした。狂気と天才は紙一重。情熱こそ芸術のエネルギーです。
つづいて須川展也さんのサックスで、タンゴの革命家、バンドネオンの巨匠、そして作曲家でもあるアストル・ピアソラ(1921-1992)の、《鮫》《オブリビオン(忘却 )》そしてお酒のCMでも有名な《リベルタンゴ》をお聴き頂きます。哀愁を帯びたピアソラの世界をお楽しみ下さい。これらの曲がオーケストラ伴奏で演奏されることは稀であり、サックスファンに贈る珠玉の作品です。
グラズノフ(1865〜1936)の《サックス協奏曲》は、サックスにとってのいわゆる定番です。グラズノフはペテルブルク音楽院の院長をつとめ、ロシア民族主義と西洋ロマン主義をバランスよく取り入れた保守的な作風を貫きました。しかしグラズノフは次第に作曲に行き詰まるようになり、最後はアル中になり、パリで客死しました。
奇しくもその「アル中」として名を馳せた?のが、本日最後のプログラム《展覧会の絵》の作曲者、ムソルグスキー(1839-1881)です。19世紀のロシアでは、まだ職業音楽家はごく限られた存在でした。ムソルグスキーもまた、陸軍士官学校出身の運輸通信省の役人でした。彼の作品が持つロシアの大地に根ざしたダイナミックなパワーは鮮烈です。そして彼もまたアルコールに溺れ、多くの作品を未完で投げ出し、早世します。フランスの大作曲家ラヴェル(1875-1937) はこの無骨な《展覧会の絵》のピアノ原曲を、華麗・流麗にオーケストレーションしました。オーケストラの中に須川展也さんを見つけてください。
(当楽団ITプランナー)佐々木 修
※なお公演当日は、都合によりグラズノフとピアソラの演奏順が変更されました。

HOME |プログラム公演批評