2007年1月13日
第45回名曲コンサートによせて

 世界で最も親しまれているクラシックコンサートは、毎年元旦に催され、世界各国にリアルタイムで中継される「ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート」でしょう。そして、このコンサートのプログラムの中心となるのがシュトラウス一家ワルツポルカです。シュトラウス一家で最も有名なのは、ワルツ王と呼ばれたヨハン・シュトラウス2世(1825-1899)。そして、父ヨハン・シュトラウス1世(1804-1849)に、弟のヨーゼフ(1827-1870)とエドワルト(1835-1916)を加えた4人のシュトラウス一家は、ウィーンの舞踏会の大スターでした。彼らは、舞踏会やイベントに因んだ数多くの曲を作曲しています。例えば医師会の舞踏会では「高血圧」、新聞社の舞踏会では「朝刊」、工科大の舞踏会では「電磁気ポルカ」、またウィーン観光列車の開通式のためには「ポルカ観光列車」を作曲しています。なおワルツでは、冒頭の序奏の部分で曲のタイトルの雰囲気を味わい、3拍子のワルツになると皆、踊り始めます。今でこそワルツは芸術音楽としてクラシックのコンサートのレパートリーですが、当時はポピュラー音楽でした。しかしその音楽は深く人の心をとらえ、多くのクラシックの作曲家もまた、自らの手によるワルツを作曲しました。オーストリアでは、歴史上最高の作曲家として、バッハモーツァルトベートーヴェンと並んで、ヨハン・シュトラウス2世を数えます。その根拠は、彼の音楽は、他のどの作曲家のどの作品よりも、世界中の人に笑顔をもたらしたということです。

 治世者は音楽が持っている民衆の心を動かす魔力に敏感です。ヒトラーゲルマン民族の優越性を鼓舞するためにワーグナーの音楽を利用し、逆にメンデルスゾーンマーラーなど、ユダヤ人作曲家の作品の演奏を禁止しました。ところが厄介な問題がありました。それはシュトラウスがユダヤ系で、しかもロマ(ジプシー)の血が入っていたのです。これにはさすがのヒトラーも悩みました。そして出た結論は、シュトラウスの演奏禁止ではなく、なんとシュトラウス一家の家系の改ざんでした。あのヒトラーでさえ、シュトラウスの音楽を止めることは出来なかったのです。音楽がファシズムに勝利した歴史的出来事です。

 アルフレート・シュニトケ(1934-1998)は20世紀ロシアを代表する作曲家です。ちなみに両親はユダヤ系ドイツ人です。今日最初にお聞き頂く「モーツ・アルト・ア・ラ・ハイドン」は、モーツァルトハイドンを尊敬しつつ、とかく聞き辛いといわれる「現代音楽」の枠を、ユーモアを持って広げる試みを示した曲です。

大阪シンフォニカー交響楽団ITプランナー 佐々木 修